MUD

ヒューマントラスト渋谷の特集上映の1本の時に見逃し続けて、ようやくバウスにて。良かったナア。。。
14歳の夏、たぷたぷと水をたたえるミシシッピ河の広がり、高く薄い青空、鬱蒼と繁る樹々からこぼれる光、真っ赤な夕焼け、円盤型の給水塔、そのうえFUGAZIのTシャツ来てる少年ってもう!80年代終わり〜90年代初頭くらいの設定かな。ネックが身を寄せるおじさんはハードコアバンドをやっているのだろうか、室内に機材やバンドのチラシなどが貼ってあったことにキュンキュンした。
オットコ映画という語り口は雄々しく且つすこぶる甘いけれど、胸にちくちくくる「パーツ」を清々しくはめ込んでくれてて素晴らしい。そして、マコノヒー兄さんが影からそっと手を振るシーンの表情の柔らかさに泣けた。謎を秘めつつ逞しくでも繊細な魅力タップリな演技はとても素晴らしく、鑑賞して数日後にまさかのアカデミー賞(ダラス、でだけど)、ビックリした。こういう賞取るような人と思ってなかったから。

アメリカの田舎町アーカンソー。鬱屈と退屈が混ぜこぜになった日々にのしかかる親の都合。そんななかで"何か" を探し求めざるを得ない少年が、あんな場所で彼に出会ったら惹かれてしまうことだろう。監督・脚本のジェフ・ニコルズアーカンソー出身らしいから、投影した部分はあるのかな。在りし日のリバー・フェニックスを思い出すネックは意外にも慎重派で、おとなしそうに見えるエリスがいろいろ積極的なのも興味深かった。
ラスト手前とかエエエという展開はあるけれど、何をどう映し出すかという問いに対して私が見たいものが詰まっていて、水面すれすれから見上げるように捉えられた河の悠然とした姿が映し出されたバウスのスクリーンを、私は忘れないだろう。