七人の刑事〜終着駅の女

2月の終わり。阿佐ヶ谷ラピュタにて。以前東中野で上映したときに見れなかったので、とっても楽しみにしていた。期待通りにほんっと良かった!
今回の特集は「お茶の間からスクリーンへ!劇場版の おたのしみ」という企画で、今作もTVドラマ「七人の刑事」の映画版。

上野のプラットホームに転がっていた若い女の刺殺体!謎の切符とボストンバッグを手がかりに、おなじみ七人の刑事たちは捜査を開始する──。国鉄上野駅とその周辺でロケーションを敢行、臨場感あふれる傑作サスペンス。

ラピュタのサイトより転載させていただくあらすじだと今もよくある刑事ドラマに過ぎないけれど、ザラついた質感の白黒に構内の雑踏と列車の音のみが響くなか(いわゆるサウンドトラックが無い)描かれる人間模様は、やってくる人々が携える重く冷たい影がとぐろ巻くよなかつての上野駅という場所の特殊性を浮かび上がらせていた。舞台は昭和40年、北の玄関と云われた上野駅。それだけでぶわっと伝わるものがあるのは、私の幼少時の思い出があるからだろう。電車に乗って東京へ。終着駅が上野駅だった。憧れの東京なのに上野駅のホームはどんより重く暗かった。改札を出て山手線へ向かう低い天井の通路を迷わないように緊張しながら歩くのも怖いものだった。今はかなり華やかに彩られているけれど、それは新幹線により時間も短縮され、東京に出稼ぎに来るだとか事情を抱えた人もそうそういなくなったからだろうか。それでもまだ奥まったところにあるホームは、東京駅や新宿駅にはない「終着駅」のどんつまりを感じてしまう。

ひとつの殺人事件を中心に往来の激しい上野駅で交差する人生をドキュメンタリー的に映し出し、当時の社会問題に翻弄させられる人々が抱える翳りがジュッと胸を突く。ラストでは混雑した構内をそのままに、行き交う人々の会話や表情や足取りが生々しく不思議な高揚感がある(娘の再会に胸熱!)。
後で知ったことに、リュックにカメラを仕込んでこっそりゲリラ撮影された模様。今じゃ個人情報云々で考えられないけれど、これによりスクリーンの中の虚構と現実、そして我が身の現実が交差して余韻を生まれるように思う。話自体もこれにて解決、という小気味良さはなく、それでも人生は続いて行く。終着駅である上野駅は人生のなかでは通過駅でしかない。けれど人はここにくればと求めてしまうのだなあ。”昭和”な上野駅が主役であり、ここに蓋をしてしまったんだなと思えてならない。

とはいえ、芦田伸介を始めとする七人の刑事の面々の渋さと関係性(若手がボケて先輩がツッコミみたいなアレ)は楽しいし、若き日の大滝秀治のまんまな面影にビックリし、老婆役の北林谷栄の軽妙さに泣きながら笑ったり。ほんと、良い映画でした。