河口

春の陽光。駅に向かう道なりの木蓮の蕾が一段と膨らみ、そのうちひとつは花弁が広がり始めてる。角を曲がると沈丁花の薫り漂い、くらくらくらり。


土曜日は横浜の新港で「若者映画」を見たかったけれど時間が合わずに断念、サクッと渋谷でオジサマに逢いに。
シネマヴェーラ「日本のオジサマ 山村聰の世界」特集。今回は中村登監督の「河口」、すっごくオモシロかったーー!場内も笑いが絶えなかったよ。

主演:岡田茉莉子杉浦直樹山村聰、田村高広
財界の重鎮・宮原と別れた元愛人の李枝は、宮原の相談役・館林の勧めで銀座に画廊を構えたものの…。さえない風貌のザ・美術オタク・館林を演じるは山村聰。李枝が男にはまるたび、嫌味な声で「あー、いやだいやだ!」「なんですか、さかりのついた犬みたいに」といちいち説教する館林が、何とも可笑しい。ウイットに富んで洒落たコメディの傑作!(ヴェーラの公式サイトより引用)

タイトルロールで井上靖原作と来て「ん?文芸もの・・・?」で、冒頭けっこうウェットだったので「あれ・・・コメディじゃなかったの?」って思ってたら、ビー玉がコロコロ転がるようにオモシロトーク炸裂で、と思ったらダークなモノローグになったりで、重さと軽さの共存がスゴいのね!
茉莉子様とオジサマたちのズレてるやり取り最ッ高。茉莉子様と画廊を営むことになる山村聰の三枚目っぷりがトンでもなくオモシロキャラで、クドクドお説教を垂れる口調や表情にいちいち笑っちゃう。男にだらしない茉莉子様に対して、男としての嫉妬ではなく純粋にイヤダイヤダと軽蔑してるトコが、これまでにない感じ。そして東野英治郎のシツこくてコテコテの大阪のオッチャンっぷりがたまらない、クドいよもう!杉浦直樹は若い!髪がある!(ヒドい・・・)田村高広は飄々と交わし続けるところがキモチワルイ・・・・

そんな人間模様も楽しいけれど、ロケーションがまた見事なのだ!時代は昭和36年、沼津の駅舎から商店街を走る景色。行ったことの無いこの街に惹かれてしまう。そして数寄屋橋。泰明小学校から交差点の交番に向かいのフジヤ。そのまた向かいにソニーの看板はあるけど「ソニービル」ではなくて、あのクラシカルな建物は数寄屋橋阪急!調べたら昭和31年開業らしいから出来たばっかりなんだなあ。観葉植物と蔦が絡まる店内の喫茶店千疋屋のフルーツパーラー? 小さい頃に行ったことある記憶。。。それから京都の志る幸が!正月に行ったばかりなのでよけいに嬉しい。全く変わってないの!でも耐震工事するっていう話だったけどどうなったのかな。人と人のあいだにすっとその街の風景が入り込むところなんて、うまいなー、そういうことだよなーってしみじみしちゃった。