メイジーの瞳

ちょっと前に見たので今更だけど書き起こし。この映画について特に情報をいれていなかったのに妙に気になって終映ギリギリに見に行ったのは、チラシビジュアルの「メイジーの表情」に見入られたせいだろう。とても良かった。これからソフト化して永く愛されそうな映画ではないだろうか。
離婚した両親の勝手な都合に振り回されるメイジーの、ひとりでポツンとぼんやりしているときの瞳は、空虚でどこか遠い。ひどく老成していてとても幼い子供には見えないのだ。それでいて両親と逢えたときの小さなからだいっぱいに溢れる嬉しそうな顔ったら!
子どもが主人公の映画はその健気で可愛らしい姿に甘く見てしまうところがあるけれど、余計な説明を省き繊細な描写を重ねることで単純な甘さだけにならないつくりがよかった。最後だって、彼女にとって最適な選択でベストな未来が待ち受けているとは言い切れない。まだまだ辛い出来事が続くと思えてならないのだ。それはメイジー自身も感じていて、ラストショットの表情には自分で掴むしか無いという「無意識な決意」が浮かんでいる気がしてしまう。
ストーリー自体は重いのにそう思わせない描き方。子供部屋などインテリアは細部に渡りセンス良く、衣装もとっても素敵で、カラフルな色使いとパターン(お魚柄のワンピース!)といった個性的なアイテムを、洗練されたコーディネートでくるくる変えつつ着回しているのが、見ていて楽しい。衣装担当であるステイシー・バタットは、マーク・ジェイコブズに師事し、ゾーイ・カサヴェテスの「ブロークン・イングリッシュ」やソフィア・コッポラの「SOMEWHERE」などを手掛けているとのことで納得&合点。ジュリアン・ムーア演じる母親はロックミュージシャンという設定で、マギー・チャン主演の「clean」もそうなんだけどどうしてああいうテンプレートなんだろうなあ。その”ハード”な印象とは逆に、映画自体の音楽(スコア)は優しく美しく、穏やかな品が感じられた。
ところでシネマライズでかかっていたのが意外でした・・・