デイジーデイジーデイジー

扉を閉めてしまう部屋を訪れました。ちょうど狭間の時間だったようで満席ではない穏やかな空間に身を置くことができて嬉しい。(混んで人と会話が目立つようだったら帰ろうと思っていた、あくまでもいい思い出にしておきたかったから)
案内されたカウンター席に座り、後ろを振り返り、窓の向こうをぼんやりと眺めます。平行に並んだ格子の隙間を埋めるように時折流れるオレンジや黄色の帯、それは昨今銀を帯びてしまった点が残念に思うのだけれどもそれでもやっぱりにこにこしながら眺めてしまう。
残念といえば店内に途中から併設された本屋の存在が実をいえば私にはうらめしかった*1。。。比較的近くに住んでいたこともあり開店当時から通っていたこの店の、途中から本棚になってしまった変形コの字のベンチに座って、店内のパースを感じながら窓の向こうの列車を眺めることが好きだったから。
そんな意地の悪い私はさらさらと降る雨粒と列車の音と色と、こぽこぽと流れる音楽と珈琲とスコーンを味わいながらこの部屋に漂うもやをしゅるしゅるとからだにしみ込ませていました、しずかでやわらかくほんのりあたたかなもや、それに出会えて嬉しかったです。どうもありがとうございました。
ギャラリースペースには西岡兄妹の原画が。繊細な描線、漆黒はナイフの輝きを放ち、闇を内包した赤や緑が点在し、一枚の絵なのに物語が見えてくる、ブレがなく完結されている閉じ込められたこの世界、あんまりにも美しいから人が描いたものに思えなくって、ああ、まるで彼らが見た夢がそのまま印画されているみたい。震えてしまう。この部屋の最後を飾るに相応しかったです。
窓の向こうにまた列車が走る。深呼吸をこっそりして席を立ち出口へ向かい挨拶をしました。

*1:もともとネットで見たときに「読むための本」というよりも「アクセサリーのための本」を販売しているようで居心地が悪かったのです。(うがった見方でスミマセン)