SELF AND OTHERS

牛腸茂雄のドキュメンタリーということもあるけれど、佐藤真の映画ということで見たかったのに*1何度か機会を逃して漸く鑑賞、アテネフランスにて。
阿賀の記憶」を見たときの「(ドキュメンタリー)映像というよりも散文詩のような」印象がざああっと蘇る、不思議な映画だった。
牛腸茂雄の「SELF AND OTHERS」はそこに写る人々を見るようで実のところ牛腸自身を見るような錯覚にとらわれる*2。そしてこの映画は牛腸を知るようで実は佐藤自身を知るような錯覚にとらわれるのだった。
佐藤真が牛腸茂雄についての映画を撮ったのがわかるような気がする。羨望と畏怖と。落とし前をつけないと自分の中で収集がつかなくなったんじゃないだろうか。そして自分は写真ではなく映画を撮る人間なのだという思いを改めて抱いたのではないだろうか。
やわらかなひかりのなかに曖昧な境界線と強烈な視線が混在していてぐるぐるぐるぐるわたしはわけがわからなくなる。あれ?この、ひとけの無い住宅街を歩んでいるのはわたしではないだろうか?過去の記憶が蘇ってくるようで。
西島秀俊の諦念に満ちたナレーションもよかった。牛腸と佐藤の作品から漂う此処にも其処にもない空気に見事に溶けている、けれどもしっかりと此処にいる。途中入院したときの手紙を読む声色が妙に明るくなるのもまたよかった。
そしてなによりも、テープレコーダからの牛腸茂雄の声が奇妙な存在感を残していて。ぞくり。

*1:といいつつ2本しか見たことしかありません。※鑑賞記録→「阿賀を生きる」「阿賀の記憶」)

*2:関連記事→「わたしめまいしたわ