10月はタルコフスキー


確かにひいやりとした風を感じるようになったけれど、背筋がしゃんとするようなあの感じはまだなくて。でも葉っぱはオレンジに色づいてきて、青空とのコントラストが美しい。良く晴れて気持ちよい日、金曜日。今週は風邪で熱が出て、今もまだ喉が腫れている。

公園の池では亀がワラワラと集まって甲羅干し中。昼休み、私も一緒に甲羅干し。


帰りに早稲田松竹へ。久しぶりの映画館、緊張するのは何故だ?それは見る映画のせいかもしれない、だってタルコフスキー2本だて。
まずは「ローラーとバイオリン」。1960年製作、『アルベール・ラモリスの「赤い風船」に触発されて作ったという、映画大学監督科の卒業製作作品で、タルコフスキーの監督処女作』*1で初見。少年が主人公の日常が描かれた作品で、さすがに初々しいけれども時折ハッとする描写があり、今後の作風と繋がっていることが興味深かったです。"ローラー"って女の子の名前かと思ってたら農業に使う車なのね!
少年がもっさりとしたいいトコの子でかわいい。(←ほめてます)昔オリンピックで活躍したソ連選手を思い出すような、いやいやなんとなく、リック・アストリーにも見えてくるような表情が愛らしい。(←ほめてます)
そしてそして、ラストシーンのあのショット、いったいなんなんだ!ぞぞぞと心にさざ波が吹いて、ぽかんと見入ってしまった。

続いて「ストーカー」。久しぶりに見たけど、こんなに「面白い」話だったっけ?するすると水が沁み込んでいくように引き込まれた。3人のオッサンもとても良いなあ。状態は良くはないけれどスクリーンで見る映像の美しさは言うまでもなく、完璧に決まった四角い枠と、曖昧なセピアのトーンを目に焼き付けるだけで充分に思えた。音もまた、微細に表情を加えていて、幾度も肌が毛羽立った。
じわりじわりと不穏な気配に満ちつつ、きりりと美しく屹立している。この、タルコフスキー作品に共通する世界感は、どこまでも深い深い底の見えない湖のようだなあ。
場内は穏やかに張りつめていて、空気感がひいやりと冷たくて、たくさんの人と一緒に見ているのにたったひとりで見ているような不思議な孤独感に包まれながら、スクリーンを見ていた。
帰り道、ちょっと冷たい風を感じながら高田馬場の雑踏を歩く足取りは、ふあふあとしていてヘンだった。


そういえばと、以前書いたものを辿るとちょうど一年前だった!しかもこのときも風邪引いてるよ…。
→「秋の空と光と水、そしてタルコフスキー。

*1:早稲田松竹のHPより抜粋