Taylor Deupree "UNSEEN" 〜 藤本涼 "live on air"


雨降る夜、たい焼きを頬張って向かう。地下に降りてTaylor Deupreeの写真展 ”UNSEEN” 、小さな空間は彼の世界そのものだった。
彼は音楽レーベル"12K"及び"LINE"を主宰するサウンド・アーティストだ。ここからリリースされたアルバムを全て持っているわけではないけれど、私にとってお守りのようなレーベルだ。まずアルバムジャケットから出会いが始まる。レコ屋で向きあってふっと吸い込まれる。視点も時間軸も曖昧な、しかし屹然としている「こことはちがうどこか」の音であることが、ジャケを見ただけで伝わってくる(ああ、これはダウンロードだけでは体感できないことだ)。
この写真やアート・ディレクションを手がけているのも、Taylor Deupree
時間の経過とともに変容するポラロイドで撮影された写真からは幽玄な空気が漂い、その靄はそのまま音になる。儚げで繊細なのに強靭な芯があるから、キリリと存在しているのだ。
それにしてもこのレーベルの世界観、特にこのアートワークが90年代後半〜2000代に与えた影響は、大きいなあ。
1階からトトントトンと聞こえてくるGiuseppe Ielasiの音にかぶさるように、外の雨音がポツポツポツと素敵な効果音になっていた。

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2階へ上がって、藤本涼の写真展"live on air"。新人作家として紹介されている彼の名前を見て驚いた。3年ほど前にギャラリーで見たことがあったからだ。そのときはどこかでDMを見て、その写真に惹かれて足を運び、とても印象的だったので覚えていた*1。当時は芸大在学中だったとのこと!出世だなあ。なんだか嬉しい。
彼の写真には霧が立ち込めている。それは遠い記憶の欠片みたいだ。撮影した対象物そのものを写しだすのではなく、画像加工などを施すことで当時の心象を浮かび上がらせているかのような。消えていく記憶を表しているような。私の中にある記憶があぶりだされたような気持ちにもなって、こころにじんわり染みがついた。

*1:過去日記辿ったらコレだった→http://d.hatena.ne.jp/mikk/20070609/p1