佐々木昭一郎というジャンル

1970年代、言葉には尽くせぬ不思議な魅力に溢れたドラマをブラウン管から発信し、衝撃的感動を与え、近年活躍する映画監督たちの多くに影響をもたらした佐々木昭一郎作品。NHKで放送された伝説の作品が、いま、スクリーンで光を放つ―。

彼が演出したドラマについて書かれた文章(どれも絶賛)を過去にいくつか拝見し、DVD化されていないこの映像をいつか見たいなあと思っていたところ、突然ユーロスペースにて上映が企画されたのでした。

夢の島少女」(1974年)…鮮烈だけどあまりに儚い映像の欠片が、いくつも頭の奥に残っている。
しかしなんというか、男の人が少女を撮った作品だなあというところが苦しかった。少女を囲む男性2人には70年代の古さを感じる(演技が辛すぎるのも難点)けど、少女にはちっとも古さを感じない=永遠な存在として描かれているからこそ、熱狂的に愛される作品なのかな。


「四季・ユートピアノ」(1980年)…「夢の島少女」に比べると映像が「生きて」いて、よかった。ほっとした。A子の、奥に痛みを秘めつつもやわらかい存在感もさることながら、そんな彼女が出会う人々との広がる関係性がよかったなあ。冒頭の男子中学生との会話に始まって、固いツボミがハラハラと花弁を広げていくみたいで、胸がキュッとなった。ああそうそう、キャスケットをかぶる仕草がもう…!それとそれと神泉駅周辺にドキドキした!あの道!駅舎!ひとつひとつ上げればキリがなく、そういうことの積み重ねで奏でられるA子の日々。時折息を呑むシーンがやってくる。それをどう説明すればいいのかわからない、と放棄したくなる。説明出来ない「何か」が持つ力、それを感じ取るだけでいいでしょう?

今回のこの機会を設けてくださり尽力された方々には感謝します。ただ、哀しいかな、元々テレビドラマであった作品を映画館という不特定多数の空間と大きなスクリーンで見ることは、出逢い方としてやっぱり違ってしまったかもしれません。夜中、膝を抱えてテレビを見つめていたかった、というのは贅沢な言い分だと承知ですが…。
このような「視聴者を何処かへ持って行ってしまう、正解のない」ドラマをかつては放送していたことを考えると、今のテレビ界は遠くに行ってしまったと思わざるをえないです。