台風が近づく夜、Thurston Moore + beck , J mascis

台風が近付いていて、朝から雨だった。しとしとと降る雨。明日は激しくなるだろう。
楽しみにしていたサーストンのソロ新作は、まさに今日の空模様のようだった。

Demolished Thoughts [輸入盤CD] (OLE9532)

Demolished Thoughts [輸入盤CD] (OLE9532)

穏やかに柔らかく降り注ぐ雨。しかしそれは細かく研ぎ澄まされた棘を孕んでいて、嵐を運んでくるのだ。
ベックのプロデュースだと知ったとき、こう来たか!遂に来たか!という喜び!*1と共に少しだけ不安が少しあった。2人の共通項はわかるけれど、昨今のベックのソツの無さがどうにも気になってしまうからだ。今更ノイジィな音遊びをするわけがないだろうし、サーストンもクレバーな人だからなあ…。
しかしそれが無知な私の戯言なのは当然であって、再生した途端に溢れ出す音の豊かな瑞々しさに胸が詰まってしまった。ああ。丁寧に細やかにギターの弦を紡ぎ、優しく切ない余韻を残して唄うサーストン。ベックはそれを最良のかたちで浮かび上がらせてくれた。キャリアとか歳とか関係なく、お互いにミュージシャンとして尊敬し信頼しているからこその共同制作が素晴らしい。因みにブックレットのアートワークはサーストンによるもので、相変わらずでいかにもというかアメリカンフィーリングというか、ベックにも流れてる部分だなーと思う。

こんな動画もありましたな。画質悪いけど。1994年の対談、ちょうど娘のココちゃんが生まれた年じゃあないかしら…。記憶にもまだ鮮明な、ほっぺが赤くておぼこい、ヘンテコ風情なべくたんが17年後、プロデューサーとなってアルバム一緒につくるなんて、感慨深い。

今回同様にヴァイオリンが使用されている旧作「Trees Outside The Academy」と原曲としては近しい位置にいるけれど、全然違う。これまでのソロ作では「お馴染み安心仕様な」ササクレが立っているけれど(そこが好きなんだけど!)、セルフプロデュースだと出てしまう「地であり且つ手癖」のようなそれが、本作では無い。代わりにちょっと照れくさいぐらいにナイーブでウェルメイドなアレンジが施され、サーストンの絶対的な唯一無二の武器である変則チューニングが奏でる混沌とした響きが立ち上がると共に、歳を経た声色が際立って、私のこころをこれまでになくひどく震わせる。それがベックの手腕であり、サーストンが託した部分なのだろう。
それにしてもさすがにオソロシイなあと思うのは、どこか光を感じさせる雨だなあと佇んでいるのにいつの間にかゆらゆらと闇に呑まれているところだ。あ、と気がついて足元が見えないと呟きながら私は安堵している。
ベックプロデュース、今度はスティーブマルクマスとのことで、どんだけアンタはオルタナ上等*2!な子なの…。

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少し前にJ・マスキスのソロアルバムを買った。

Several Shades of Why

Several Shades of Why

どうにも切なく胸を締め付けられる、カラカラの、音。どこまでも続く荒野の向こうに落ちそうで落ちない夕陽。近いようで果てしなく遠いところで鳴いている。なんでこんなに、ってくらいにね。どうにもならないもどかしさや焦燥感はすでに枯れているけれど、でも。この音を鳴らさずにはいられないし、この音を聴かずにはいられないんだ。
ジャケのタイトル文字をキム・ゴードンが書いたことにも嬉しくなる。


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ベックとサーストンとJ・マスキス、この3人の音を聴くとカート・コバーンを思い出す*3。そしてヤマジさんもね、と言うとまたかよ…ですが、開き直って書いてしまおう。ヤマジさんのソロアルバムが出ないかなあと切望しています*4。ライブ音源で是非聴きたい。
そういえばこの間、アマゾンさんからメールで「アナタにオススメ」されたアルバムが、「dip/feu follet」「dip/underwater」「ヤマジカズヒデソロBOX」だったんですよ!持ってるよ!つか、判られすぎててコワイよ!なんなのもう!


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昨日購入した林央子さんの「拡張するファッション」を読んでいる。

改めて書くと思うけれど少しだけ。X-girlのキム・ゴードンやMILKFED.のソフィア・コッポラを始め、ファッションを1995年から紐解くという切り口でまとめられた本作の頁をめくるたびに、渋谷〜原宿間を歩きまわってたくさんのことを吸収した毎日が蘇り、「時代の空気は検索できない」ことを噛み締めている。


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そんなことを思いながらネットを辿れば、「Tapedeck.org〜analog audio tape cassette nostalgia」なんてサイトが取り上げられていて、おおっと涙する。FUJI(というかアクシア)にTDKSONYDENON、いろんなメーカーの使ったけど、マクセルのUD?の楕円窓デザインが斬新!ってよく使ったし思い入れがある。同じメーカーでも時代によってデザイン違うから、人によって「コレ」ってデザイン違うだろうしね。あ、そういや「どうくつのカセットテープの樹海の中から帰れない」なんて歌詞もあったなあ。。。とうまくつながったような、取り留めもないところで今日の記録はオシマイ。おやすみなさい。

*1:ああッ私の王子様が!

*2:sonicyouthはオルタナといえども、出処が他のバンドとは全く違うけれど

*3:サーストンとカート、それぞれに対する印象や思い入れをY氏と話したらなかなか興味深かった。今度徒然に書きたいなーとかなんとか

*4:dipも勿論なんだけど