可憐な娘たち「胸がときめく〜司葉子」

神保町シアターで、芦川いづみと共に特集された司葉子出演作を2本。


【その場所に女ありて】
とても素晴らしかった!ココロ打ち抜かれると同時にパワーを貰った。司葉子のキリリとした美しさ。その姿勢と眼差しは生き様そのものだった。
昭和37年、東京オリンピックを目前に控えた高度経済成長真っ只中に銀座の広告代理店*1営業部で働くキャリアウーマンを、司葉子が演じている。昼はバリバリと先頭に立って働き、夜は麻雀で皆を打ち負かす。
個人的には昔働いていた小さな小さなデザイン事務所の日々を思い出し、チクチク胸が痛むのでした*2
オープニングの銀座の街頭をバックに流れる音楽の、チェンバロと電子オルガンを使用したメロディの不安定な旋律に並々ならぬものを感じ取る。業界ものなんていうとツッコミたくなることありそうなのに、仕草、セリフから見えてくる人物造形や各エピソードが実に真っ当に描かれていて、つっかかるところなくすっと入ってくる。そして誰かがイヤな奴ということはなくて、それぞれがそれぞれの立場で物を申し、接している清々しさがある。
聡明で美しい司葉子の立ち振る舞いは、カッコヨクて参ってしまうな!洗練されたスーツ姿がとても素敵。あくまでも女性らしさを失わなわずに凛と佇む姿。プライベートに悩みを抱えながらも「あの場所」で生き抜くために武装している精神性が感じられる。
そんな彼女の生き方を映画として世に送ることはかなり挑戦的だろうけれど、クールトーンな脚本や撮影など節々から、監督を始めとするスタッフの方々の真摯さを感じてぐっとくる。古びていないし、いつの時代にも響いてくるメッセージがあった。


【帰って来た若旦那】
昭和30年、銀座の老舗カステラ店「南蛮堂」とライバルの洋菓子屋「櫻ベーカリー」が舞台だなんて、それだけでポイント高くなる!しかもカステラ屋の若旦那が鶴田浩二ですよ!
「櫻ベーカリー」の店頭が、以前写真で見た「実家の昔の店舗」と重なって、震えてしまった。それとかつて道玄坂路地にあったあのパン屋も思い出したなー。。。にしても「櫻ベーカリー」の店内がイマイチ描かれていないのが、残念だったな。「南蛮堂」2階の厨房にはウキウキした。
まあなにしろ「ドタバタオモロ」映画で、ざっく〜りとしたつくりにツッコミどころは満載なれど、柳家金語楼を中心にした会話の掛け合いがベタで楽しかった。清川虹子の大阪のオカンっぷりが最強。司葉子はキレイなお嬢さんでした。

*1:で、クライアントの製薬会社が日本橋というのもナルホドサスガ。街の描写もいいんだよねえ。ちゃあんと空気が流れている

*2:あのブラックっぷり、語りたいよね…なんつって