風船/我が家は楽し

駆け込みでまだ記してなかった旧作2本を。
特集:川島雄三「イキ筋」十八選 〜「風船」

原作:大佛次郎 日本画壇で嘱望された画家出身の主人公が、戦後、実業家として功なり名を遂げるが、どこか空しさを感じている。息子の世代との相克。妻との確執。孤独な魂を持つ主人公の心情。 http://www.nikkatsu.com/dig/kawashima/kaisetsu.htm

シネマヴェーラの川島特集にて。森雅之の薫り漂うよな気品ある格好良さが際立ち、芦川いづみの愛らしさがキラキラ輝く。三橋達也のダメ男っぷりやクールビューティー北原三枝新珠三千代の薄幸な美しさだとか、スター競演ってなきらびやかさの中で浮かぶ”風船”たるものの存在感が心に残る。ただ森雅之演じる男の生き様って奴にモヤモヤ…。芦川いづみ演ずる娘役の清廉無垢な様が小児麻痺を煩ったゆえのという設定もなあ。中平康の「誘惑」もそうだけど、男性が妄想する純潔な乙女たる少女像を一身に受けてる感じがどうも苦手…。タイプの異なる4人の女優が競演しているのだけど、森英恵による衣装によってその違いが演出されているのも楽しかった。クレジットに森英恵の名が記されることは本作が初めてで、川島監督の計らいだそう、素敵。あと、高台の高級住宅街の角にそびえる豪邸のロケーションが素晴らしかった!


特集:追悼企画 女優・山田五十鈴アンコール 〜 「我が家は楽し
監督:中村登。OPのミニチュア模型を使用した映像が素敵。笠智衆演じる父が勤続25年(役職付きだし森永製菓勤務だし!)(ところで森永が登場する映画ってけど、当時宣伝としてスポンサーに付いてたとはいえ宣伝効果が高かったとはあんまり思えない)で表彰されるところから始まるので、愛らしい話かと思いきや後半一気にどよーんと暗くなった。昭和26年、まだ戦後間もない貧しさを思わせる父母子供4人の家族の物語。山田五十鈴演じる母は一歩引いて家族を支える献身的な姿。表彰式のあと居酒屋でささやかに祝杯をあげる2人がとても素敵だった。娘役の高峰秀子はこういう”何か”を抱えた役がほんとうに素晴らしい。後半の流れが主軸とはいえ、母が娘のためを思っての行動とその所以がちょっと、やだ、なあ…。思わず引いたわ。