グッバイ・ファーストラブ

無理矢理会社出てきちゃったごめんなさい。渋谷のヒカリエでサンドイッチ買ってからイメージフォーラムへ。文化会館の横の道や上の連絡通路から本屋の前通って、歩道橋からそのまま東邦生命ビル通り抜けてくの、ほんと大好きだったなあ。


昨年日仏会館で見た以来2度目の鑑賞で、今回のほうがグッときた。カミーユのこころの奥底にちろちろと揺らめく光を終始感じていた。未成熟なまま鍵をかけた部分とその後の建築学を志す聡明な部分とのアンバランスが興味深かった。過去を抱え込んだ内面の動向に対して、古い建築を”再生”する仕事を手掛けるという関係性も面白い。
不安定で形の無いこころを見せつけた前半から一気に後半、建築学の講義が語られて、かたちを見いだしていく描き方が好きだ。バウハウスのマイスターハウスなどの名建築巡りも楽しく、取り壊されるときに見学した広尾のフランス大使館の造形を思い出した。
撮影はどれくらいかかったのだろうか。合わせて10年近くを演じるにあたってカミーユ役のローラ・クレトンの表情は明らかに変化していく。シュリヴァン役の男の子はどこか甘えたふうな幼さが抜けないのだな。ロレンツ役のマーニュ・ハーバード・ブレックは理知的で紳士で洗練されたスマートな佇まい。とっても素敵でうっとりです。どう考えてもこちらのほうが良いです(キッパリ)!
そうそう、それぞれの服装もとってもよいのだなー。赤のダッフルに白いマフラー。マフラーは何年か後のシーンにも出てくる。シュリヴァンやロレンツ、年齢と人となりが見える服装も。


印象的なシーンはいくつもあるけれど、「水に浸かる」シーンが特に素晴らしくって、まさにこのときにカミーユは「空間を捉えること」が出来たのはないだろうか。海のシーンの音響と川のシーンの露光には、カミーユが水に溶けて世界に繋がらんとした空間の広がりが切り取られていて、くいっと私の芯が持ち上がったようだった。
音楽の使い方がすごく好き。耳とセンスの良さがあって、例えば講義のシーンだったかキリリと創造的な空気が立ち上がっていたのが印象的だった。
ラストのLaura MarlingとJohnny Flynnの唄声が頭のなかループしながらの帰り道。


監督のミア・ハンセン=ラブいわく「女性的な世界観とは? 世界観とは一体何なのか? 問うべきものがふたつあるなら、私は後者の問いかけをし続けていきたい。その問いかけを続ける限り、私は窓を大きく開けて、深く息をし、映画監督として前進できるような気がするからだ」
この言葉に強く感銘を受けた。これこそが私が彼女の映画に惹かれる理由であり、ソフィア・コッポラミランダ・ジュライが苦手な理由とも云えるかなと思う。