風の音楽

今日も日差しが強くなり、もくもくと形を広げて白く鮮やかな輝きを放つ雲が窓の向こうに見えた。この風景をトレースすれば、いい材料になるのではないだろうか。そんな「お手本」のような空だった。
夜、ご飯の片付けをしながら見えた向こうの空はどよんと濃灰色の厚い雲で広く覆われているのだけれど、地上で黒く陰るビル郡の上がビカー、ビカーと内から白濁した光を灯していて、ぞっとするくらいに不可思議な光景だった。新宿を中心に連なる高層ビルの、光源の強い照明の集積が太陽の代わりとなって雲を下から照らしているようだった。
窓から入る風が涼しくなった。日中の暴力的な様とはうってかわって穏やかな夜。風の気配とモーターの低い持続音に微かにかぶる虫の声。今宵の音はこれで充分だなと暫くぼんやりとしていたけれど、ふと思い出してこれをかけた。

Singing Stones

Singing Stones

仄暗く漂い続けるノイズに時折弦の響きが重なったり離れたり。外からの音と呼応して風になって流れていく。