ジンジャーの朝〜さよなら、わたしの愛した世界〜

原題は「GINGER & ROSA」とスッキリしてるケド、邦題の「〜以下」のベタさは恥ずかしい…
サリー・ポッター監督/エル・ファニング主演で、仲良しの女の子2人の関係の変化と成長を描いた云々というさわりだけで見に行くことにしました。
想像通り、oliveの映画コーナーの構成を思い起こす作品でした。ざらっとした紙質まで浮かんでくるよ…。
エル・ファニングは大人になったねえとオバチャン気分で見ましたが、それでもまだ15歳!冒頭はすんごく顔がまんまるでぶーたれててエエエエ?と心配したんだけど、キリッと大人びたり、かと思えばふにゃっと可愛らしかったり、ちょうど体型がコロコロ変わるときというのもあるでしょう。彼女の表情や仕草ひとつひとつに、ジンジャーが抱える薄いガラスのような想いがヒリヒリと伝わってきました。髪を赤毛に染めているのだけど、白い肌に赤の髪、空の水色が、ジンジャーの心模様を映し出すような色味で美しかった。
友人のローザ役のアリス・イングラートは奇麗だったなあ。ジンジャーとの対比で大人びた子。「女の子2人組」はこういう違いが無いとね。なんとびっくり、ジェーン・カンピオン監督の娘だったー!
舞台は冷戦時代に突入した1960年代のロンドンで、家族の問題で浮かび上がる不安感が、核戦争による世界危機への不安感と重なるという構成とその直接的な表現には驚いた。どうすればいいのかわからないもやもやがどんどん形になっていき、苛立ち、それを抱え込むしかなくふくれあがっていく。”誰か”に対する不安定な気持ちを”世界の終わり”に結びつけることで、なんとか持ちこたえようとする切なさ。ジンジャーはとても真面目で良い子なんだなあ。嬉しくて思わず側転したり、屈託の無い笑顔を見せただけに後半の表情が胸に痛い。詩を書くことで心の安定を測ろうとするのだけど、翻訳のせいか「詩」ではなく「台詞」のままだったのが、残念。
ざっくりセーターに細身のジーンズなどのファッションが素敵だったり、ジーンズをピチピチにする方法とかくせ毛をストレートにする方法とか、眠れない夜などに「お湯沸かそうか?」と声をかけるとか、ごちそうにコテージパイとか、細かなところがとても楽しい。
音楽は店先のジュークボックスにコインを入れたり、部屋ではレコードかけたり、、「テイク・ファイヴ」に始まって、マイルスやセロニアス・モンクなどのジャズが中心に使われている。あくまでも生活の一部として当時実際に流れている感じを表現したと思うのだけど、それらの色気のある大人の男っぽさ溢れる音と、透明感をたたえた静謐で繊細な映像には違和感があったかなあ。