オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ

今年の映画納めに選んだのはやっぱりコレ!年の瀬の喧噪の寒さの中映画館に入ってジャームッシュの新作を見るなんて素敵だな。
次回作が「ヴァンパイア映画」と知ったときはとても驚いたけれど、前作の「リミット・オブ・コントロール」と繋がりながら、いや、これまでの全作を網羅する作品だった。
今年60歳!のジャームッシュが映画監督としてデビューして30年強、状況の変化を痛切に感じつつも、もどかしさや苛立ちなんてものはこの歳になればもはや無く、けれど隠せない嘆きをこんなふうに昇華させ、美しく映し出す。静かな怒りはヘヴィなノイズに忍ばせて。でも大切なのはこんな世の中でも彼が楽しんでいるってことだ。

旋回する星空の軌道がレコードの回転に移り変わり、宇宙と音楽が溶けて地上のアダムとイヴに繋がっていく。ジャームッシュらしくないロマンチックなオープニングに一気に吸い込まれてしまう。映像に呼応して弦の響きがドローンとなりこの世に巡回していく。
この音楽だけでも私は嬉しいけれど、ティルダ・スウィントンミア・ワシコウスカが姉妹って!さすがなセレクト。この二人の皮膚の薄い感じは似ている。
ミアちゃんが悪戯っぽくギターをいじったり、嬉々としてドラム叩くシーンの愛らしさ!胸を打ち抜かれてしまった。ジャームッシュったらわかってらっしゃるなあ。
ティルダ様はとても美しく気品があり冷たい血を感じるけれど、久しぶりに恋人に会いにきたときのとても嬉しそうな柔らかな表情はまさに恋してる顔そのもので、とっても可愛かったなあ。対してトム・ヒドルストン演じるアダムはめんどくさい男だよ・・・。彼のプライベートスタジオ風景やヴィンテージギターのくだりなどは、とても楽しかった!シルバートーンのギター出てきて心の中でキャッキャッしちゃった。
去年の2月にリリースして早々に購入したジャームッシュとJozefさんのアルバムはジャケからして痺れるカッコヨサなのだけど、静かに透明なせせらぎの旋律を奏で、地の果てで降り注ぐ漆黒の光の粒を浴びてかたちにならない映像が浮かんでくるような音盤。今年出たアルバムも大変良いけれど、こうやって自身の映画に大々的に使うようになるなんて!今作はジャームッシュの音楽への愛と敬意が強く込められていて、ロカビリーといった長年寄り添ってきた楽曲とともに、white hillsやヤスミンなど今を生きるミュージシャンを紹介する姿勢が素敵だった。彼らの楽曲の使い方、あの絶妙さは実際に敬愛しているからこそのものだ。
あからさまなくらいに固有名詞を挙げるのは知らなくてもググればわかっちゃうってことが込められている気もするし、you tubeで音楽を聴くことへの揶揄が込められたセリスがあったけど、ミアちゃんがやってきたときに見てた映像オモシロかったなあ。ティルダ様がiPhoneを使い握ったまま寝ちゃってるとか、ネット依存とは何事かというワケではなくて、ああゆう形で笑いにしちゃうのがいいな。
そして廃墟と化したデトロイトの闇を彷徨うシーンが美しかった。この街でも音楽が生まれていたのだよね。血を飲むシーンの背徳と恍惚にこれまでにないエロティシズムがありつつ、「血液アイス」*1とか茶目っ気もタップリ。

アダムの部屋には死者たちの肖像写真があった。そこには亡くなった人たちへの想いが込められていて、自らはヴァンパイヤとなってこの世に生きる決意が感じられる作品だった。これで2013年映画納め!【追記】書き忘れてた!音楽家でヴァンパイアって灰野さんだなーって思いながら見てたの!


歳末の渋谷の空。
花びら餅と年始のお菓子、丸餅に粒あんを購入して帰宅。

*1:タイアップされてたレフェクトワールの、ナルホド!