やさしい人

前作「女っ気なし」が素晴らしかったギヨーム・ブラックの新作で、同じくヴァンサン・マケーニュが主演。ユーロスペースにて。
彼がどんな人なのかがわかるファーストショットの、孤独な寂しさが沁みる。『原題は「Tonnerre」といい、今作の舞台になっているブルゴーニュ地方の田舎町トネールのことだそう。森と湖がほど近く、ひいやりと冷たい空気と光に包まれるこの街がとても美しい。俗世から切り離すかのように雪に覆われる風景が物語に繋がっている。白き雪をザクっと掻けば、人々の暮らしの生々しさがある。単に田舎町というだけではなく、この土地には歴史と文化が根づいていることを感じさせてもいて、地元の人々の日々をさりげなく描くことで街の魅力が伝わるのだな。
ヴァンサン・マケーニュの役柄はミュージシャン!顔立ちはスッと細身になったとはいえ、落ち武者ヘアにはやっぱり悲哀が感じられる。ダンススクールでいきなり派手に踊りだすシーンもカッコイイのではなくって、恋をしてテンション高くなった故の愛らしき哀愁があるのだよ。。。ああそうそう、革ジャン着てるわりにポロポロと弾き語るのはSSWな内省的雰囲気なのが不思議。。。
物語は意外な急展開を見せ、しゅっと終わる。彼が「気づく」ためにはこれほどの大振りを持ってこないと駄目だったのかと思うと、切なくもなってしまうけれど。