ショート・ターム

ヒューマントラスト渋谷にて。最近ここで見ることが続いているな。この作品はシネマカリテの企画内上映のときに知ったものの、見に行くことができなかったので楽しみにしていた。とはいえどんな内容なのか調べていなくて、「SHORT TARM 12」というタイトルから近未来の話しだとばっかり思っていた。ところが思いっきり現実を掌に広げた話だった。
細やかなさざなみが寄せては返し寄せては返し、いっぱいに薄く張った水面のふるふるとした震えが今にも決壊しそうになりながら、表面張力でなんとか持ちこたえていた。だからラスト、ポーンと放り投げられたかのように光を拡散してゆっくり旋回する様をぽかんと見つめた。眩しかった。
キリキリと皮膚に痛くザラザラと苦味が舌に残ったままの記憶を、やわらかな毛布で包みやさしいまなざしで解放してくれた。「寄り添うこと」と「寄り添ってもらうこと」には境界線はなく、どちらも簡単なことではないし、強要はできない。「自分のために、誰かのために、全力疾走する」なんて書くとひどく青臭いどこぞのテイストで嫌だけど、彼女の懸命な走りっぷりにグッと来ずにはいられないのだ。役者陣が皆、魅力的だったなあ。
重い題材を丁寧に解し、洗練された感覚に持っていくところが今っぽいようにも思う。