「都市のインク ― 端島複合体 同潤会アパートメント」と「設計のプロセス」

表参道から歩き出す。大坊があったビルは敷地そのまま新しく4階建てのビルを建築中だった。概要見ると多店舗展開してるカフェが出来るのかなあ。。。なんだかねえ。


裏通りを歩くと長年あったホテルが閉鎖されていた。やけに派手なビルとちょっと古めなマンションと小さな建具屋が並ぶ通りを歩くだけで、時代の移り変わりが感じられる。路地の奥へ進みギャラリーへ。

植田実写真展 ― 都市のインク「端島複合体 同潤会アパートメント」

建築評論、編集者として長年活躍されている植田実さんによる写真展は、端島軍艦島)と同潤会アパートメントを題材にした内容で、1972年から2012年のあいだに時折撮影していた記録をプリントしたそうです。

長く住まわれてきた表れとしての増改築の様相、外壁の剥落や金属部分の腐蝕、けれども住むひとびとの丹精による花々や庭、サイン類の工夫などのすべてを、私たちは現在という一視点から見ていたのです。いいかえれば年月の重なりの順序が見分けつかなくなり、建物細部から佇まいから場所までが自由に錯綜した、古くてラディカルな建築遺産が身近かにあった現在、そしてその一切が失われた現在が私たちの立っているところです。

という序文に、建築評論に携わってこられたまなざしが伺えます。
今はない時間が閉じ込められた写真に対峙するのはとても不思議な感覚で、私の知らない時間とかつて見た記憶がないまぜになって、今ここにいる時間が立ち上がってきました。そして単純に「カッコイイ!」って写真ばかりで素敵だったなあ。
ぐるりと写真を見終わって気がついたのですが、吹き抜けになった壁の上の方にモノクロ映像が流れていました。煉瓦造りの街並みはヨーロッパの一角に迷い込んだように濃霧が漂う雰囲気があるのだけど、「三井銀行」という小さな看板が目に入ってちょっと驚く。これは「1961年に8mmフィルムで撮影した丸の内」だそう!すごい!植田実さんが1935年(昭和10年)生まれと知り更に驚くのだけど、一貫して「建物から世界を見つめる」ことをされてきたのだなと実感する。


そして外苑西通りへ出ると交差点のランドマークが解体工事中で、既にビル名は外されていた。黒川紀章の設計なんだよねえ1976年建築で当時は最先端であったものが、あっけなく無くなってしまうのだから。


この界隈は各時代が止まったところがある。

ここもどうなるんだろか。



ピテカン!



古い石垣と煉瓦塀が見える。

「設計のプロセス」展

日本を代表する建築家による「設計プロセス」を紹介として、模型やドローイングなど「どのような変遷を辿って」設計されていったのかが垣間見れる展示。クライアントが一企業一個人だけでなく、最近多く目にする住民との対話で決定していくものなど、風呂敷を広げてからどうやって畳んでいくかという過程は同じだけど、表現方法の違いが面白かった。
前にも書いたけれど、建築物は建築家の思想や観念に加え、形や素材などに建築当時の時代背景があからさまに現れるし、不特定多数の人々へ無意識に時代の空気を作り出し、何世代も超えて後世に残ってしまうのだなあって歩くたびに感じる。だから「設計のプロセス」をどう辿るか、建築物を建築家の思想から開放し、普遍化させるためにも大切な作業だなと思うのだけど、それってどんなことにも共通することだな。


渋谷へ出て、ライブを見に会場へ向かった。