高松次郎と奈良原一高 / 国立近代美術館

雨が降ってきた。午後時間休を貰って、近代美術館に行くために竹橋駅下車。直結の毎日新聞ビルヂング、地下から1階に上がる階段やエレベーターホールなど、「あのころの未来」感あってカッコイイなあ。
さて近美。

高松次郎ミステリーズ

単純にカッコイイってアホなコト思うだけじゃダメなのかしら。謎めいて煙に巻く作品を「わかりやすくていねいに」読み解いいた上で展示、場内に立ち込めるベニヤ板のニオイの正体である壇上で、最後に全体を一望する構成がユニークだった。けど。高松次郎の作品を借りて、トラフの会場構成力をアピールする展示ともいえちゃったような。展示作品の中では最晩年の素描がとても素晴らしくって、クリームパンなどを鉛筆で一筆書きのようにさらりと描いているのです。マチスやクレーのように、病床で不自由であっても生み出さずにはいられないという想いの結晶で、グッと来たなあ。。。

奈良原一高「王国」

昭和33年発表の、北海道の修道院と和歌山の女性刑務所を撮影した「王国」を紹介。立ち上がる研ぎ澄まされた空気は、隔絶された世界で向き合うものは自分(もしくは神)しかいないからだろうか。シルバープリントの粒子の美しさ。静謐でドラマチックな構図。どこかヒリヒリとして胸に滲みた。去年「イーダ」を見たときにピンとこなかった理由がなんとなくわかった。
続いて所蔵作品展内でデビュー作である「人間の土地」から一部紹介。軍艦島と呼ばれる端島がモチーフで、昭和30年前後の端島は、実際に足を運んだときの朽ちていく姿とも、写真資料などで見た姿とも、趣きが異なっていた。
石炭採掘のために人工的に作られ、狭い中に巨大な建造物が立ち並ぶ孤島。先の「王国」に繋がる思想が込められた、その後のこの島の運命を予言したような写真だった。幼少時を長崎で過ごした彼が大学院生時代に九州一周旅行で訪れた際に衝撃を受け、改めて出掛けて撮影をしたのだという。いままで写真とは関係のない生活であったのに、初めて自分のカメラを手にして。
この島で暮らした人々にとっては重い切り口で語られるのはいい思いがしないかもしれない。けれど奈良原さんの視点を今改めて考えるべきなのではないかと思う。
→以前書いた記録です : 「軍艦島上陸!

今日が閉山した日だったと帰宅後知った。