OGRE YOU ASSHOLE LIVE 10th anniversary

12日(日)赤坂ブリッツにて。
開場時のBGMがヨラテンゴのNuclear WarやMatching MoleのO Caroline、Harpers BizarreにSerge Gainsbourgに・・・彼らの音楽脳内が伺えるセレクトでとても楽しい。こういうところがすごく信用できるのだよねえ。

暗がりから1曲目。ステージにシフォンのような薄い幕がかかっていて、ステージ後方にオレンジ色の丸い光が4つ、ゆっくりと点滅する様がミニマルアートのよう。浮かび上がる彼らのぼやけたシルエットともに奏でられるのは「ロープ」。私が前回(2014年9月のfever)見たときとは全っ然違う音の存在感に圧倒されて、うわなんか今私はスゴイモノを見始めている……と震えてしまいこの時点で涙腺が決壊してしまった。早すぎである。昼間に「かくかくしかじか」全巻一気読みして腑抜け状態から抜け出せていないのかもしれないケド。

それから「素敵な予感」、2013年夏のUKFCフェスで衝撃を受けた「彼岸の音」だった。床下からズモモモモ・・・とやってくる不穏な地響き。後半のノイズとフラッシュの塊は凄まじかった。この曲はいったいなんなのだろか?恐ろしく凶暴な轟音は決して耳障りではなく荒んでもいなく、ひどく純粋で、音楽はこうあるべきっていう自我とか類型化が取っ払われた音が鳴っていて真夜中の嵐のようだった。

中盤は旧い曲を”シンプルに”演奏。「コインランドリー」「ピンホール」「アドバンテージ」「知らない合図知らせる子」、と畳み掛けてワアワアと会場中が盛り上がった。改めて聴くと初々しさがあり、Bombay Bicycle Clubあたりとの同時代性を持ちつつも、ゼロ年代な邦楽”踊れるロック”バンドな跳ね方なのだなあ。とはいえ客を煽ることもせず動かず淡々と弾き唄う彼らが新たな地平を求めたのは興味深いし、向かった先が大正解!なわけだけど、それってなにより本人たちの資質があってこそだとしみじみ思う。

あと2曲やります、と始まった「ロングロープ」は輪がグングン大きくなって昂揚感がハンパなかった。このアレンジが安牌になっちゃったかな?と思った時があったけれど、今日はブワーッとドーパミンが放出されながらもどうなっちゃうんだろう?ってスリリングさがあって、楽しい!と思ってたら、馬渕さんのギターがトラブったようで、出戸くんが唄いながらアレ?アレ?ってチラ見してるなか、クルックルッとその場で立ち回りながら「なん!とか!しな!けれ!ば!ば!」と尋常じゃない速さでシールドをシュパシュパシュパー!と弧を描きながら手繰り寄せて、オーラスの大爆発大円満に間に合った流れがホントにもう、更なる昂揚感を産んでウヒョーっとした!この間PAで中村さんが間が空かないように急遽音を足していた、ハズ。

そんな「ロングロープ」を終えて他のメンバーが退場していったので、さっきあと2曲いったのは間違えカナーと思ってたら、出戸くんだけステージに残り(!)、古いラジカセをいじりカラオケを流しながら(!!)、ドラムセットの前に座ってマイクを使わずに唄い出した(!!!)のが「他人の夢」だった。こんなやり方有り得るんだ・・・。ぽかんと見とれた。衝撃的だった。4人とスタッフによるチームが作り上げた、あれほどの熱量のある現在最高峰な理想郷を突きつけてきた最後に、諦念に満ちて幻のような、ひとりぼっちの儚くて切ないやさしい調べが待っていたなんて。
オウガのコアな部分をスッと抜き出す、こんな演出が出来るほどにオウガはバンドとして唯一の存在になった。異型であり、それを誇示することもせず、そこにいる。フェスも対バンもバンバンやって、マイスタジオで練習し、アルバムつくって、すごく健全だなあ。


ドラムの勝浦さんは正確無比なリズムに加え、曲の隙間のこれ以上無いほど的確な瞬間にパスっと音が出せる技にホレボレするけれど、正直いって他3人は決して高い演奏力と個性を持っているわけではない。けれどそれぞれの創造力と表現力がチームとしてひとつになることで、凄まじい力が放出されるのだ。参った。軽やかに跳ね、重く蠢く、あれほどの幅と揺るぎなさは、だからこそ生まれたのだな。

オウガのライブは頻繁には見ていないけれど(この数年だと2012年秋の松本、2013年夏のUKFCと年末のリキッド、2014年秋のfever)以前感じていた良くも悪くも優等生ではなく随分と逞しくなり、マジックを創りだせる余地が出来ていることに感嘆させられる。

音楽が日常に当たり前にあって、たくさんの音楽を偏ることなく貪欲に聴き、自分のセンスだけではなくメンバーは勿論、先人の(!)教えを素直に取り入れ、しかし影響を受けて真似した曲をつくるのではなく、咀嚼して呼吸して、今の自分たちに落としこんで表現していることがよくわかる。

「それぞれが新しいものを常に掘っている感じはしますね。みんな音楽に限らず、アートとか生活で触れるいろんなものとかで、自分にとって新しくて、より心地よいものを常に貪欲に探している感じはします。」

「この曲のこの部分がカッコいいって感じると、それに似たリフを作ったり、エフェクターを探してきたりしてアレンジする人が多いと思うんですけど。僕らは好きな曲の印象を再現しようとする、って感じでしょうか。ギターのフレーズがどうこうとかは全然考えてなくて、いいと思ったときの気持ちを再現できるかどうか、再現している質感になっているかどうかをいつも考えてますね。」

「(「homely」での変化について)セッションで作ってた頃よりも、レコーディング作業をやる段階で、バンドアンサンブルが決まってない部分がたくさんあるようになったんですね。そういう変化があって、プロデューサの石原さんも、大きくアレンジする隙があるって思ったんじゃないかなと。」

→ ”【interview前半】OGRE YOU ASSHOLE『ペーパークラフト』
→ ”【interview後半】OGRE YOU ASSHOLE『ペーパークラフト』

また、同時期の「インディーズイシュー」でのインタビューでは、地元長野に所有のスタジオでは「4人が一定のリズムをキープできるとか。いいグルーヴを出すための練習ばかり」している話が、特に印象的だった。有りがちなジャムったなかで曲が出来上がるのではなく、基礎体力を付けることで気づいたり、表現可能になる音がある。(→リンク


そうそう、先に挙げた「BELONG」のインタビュー。『今自分達がカッコいいって思っている音楽はどこにありますか』と問われ、
「どこにも着地していなくって、一体これが何なのか言い切れないけど、何か面白いことになりそうなものって1番カッコいいと思う。」
この一言をまさに体現出来ている!
10周年おめでとうございます。これからもどんな変貌を遂げるのか、楽しみにしています。
追記:ブリッツは天井が高く窮屈な感じがなく、ステージも高い位置なので後方且つ背が低い私でもよく見えたのが嬉しかったけど、音響が良いとは言い切れず。でも退場しやすくアクセスも良いのが利点ね。今回の「他人の夢」はこれくらいの大きめのハコだとぽつねん感あって意味性があるけれど、小さいハコだとここまでグッと来なかったかも。