晴れたり。

曇ったり。

何日かまえのこと。外は明るく柔らかい光に満ちていたので白い部屋に向かう。今日は壁になにもなくがらんとしていてマットだったりつるんとしてたりくすんでいたり、白は様々な表情を見せていて床にはレースのカーテンが作り出す影がさやさやと模様を写し出していた。聞こえるのは遠くから微かに車が走る音ただそれだけ。わたしのからだの色素が抜けていってこの四角い空白のなかに溶けていった。


昨日の帰り道、空気はあたたかく湿り気を帯びていて、雨の訪れなのか春の訪れなのか。

そして今日は雨。写真を見に行こうか映画を見に行こうかと思いながらも何処かもやもや…"目が閉じている"ことはわかったから、ただ歩くことにした。もやもやを残したままゆるやかな坂を下っていると向こうからやってくる人がいる、江戸時代のお屋敷跡らしい趣ある塀に沿ったこの道は狭いのでお互い傘を寄せつつすれ違う、その瞬間にぱあんと頭を過る遠い状景にくらり、何気ないことが妙にこころに響いてくるのが不思議。ああこの坂の途中でいつも魔法にかけられる!それからその先にある店の石油ストーブの傍らで珈琲を飲み本を読む、武田泰淳の「目まいのする散歩」、『あらかじめ定められた散歩』とはまことに名文句で読むたびにどきんとする、泰淳さんという豆で百合子さんが淹れる珈琲を飲んでいるよな湯気に包まれて、頁から目を離すと壁に枯れたススキがつくるしゅるしゅるとした影が写っていた。外へ出ると雨は弱まり傘を閉じた。明日の朝食用にカンパーニュを買い帰宅して、久しぶりに聴きたくなったのはこのアルバム。

It'll End in Tears (Reis)

It'll End in Tears (Reis)

終わる1月を惜しんでいるのかもしれません。再び降り出した雨音は激しくなってきました。