太田和彦編 映画と酒場と男と女

映画に酒場はつきものです。人は何かを背負って居酒屋の暖簾を分け、酒場のドアを押す。問わず語りに、居酒屋主人、バーのママに心をうちあける。悩みも、愚痴も、野心も、欲望も。秘めたる恋も、せつない胸も。映画に酒場が欠かせないのは裸の心を描けるからです。男と男が、男と女が、女と女が酒場に入るのは、必ず自分の心を見せたいとき、酒の力を借りて告白したいとき。そんな場面を映画が見逃すはずがありません。
太田和彦

神保町シアターにて、こんな謳い文句の特集企画とあらば乗らないワケにはいきません!あ、でもワタクシ哀しいかな、下戸ですけど。
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「東京おにぎり娘」
なんぞこのタイトル!しかも主演が若尾文子ときたら見たくなるに決まってます。
オープニングの、文子のクセのある声によるモノローグからああッ素敵…とワクワクし、賑わう新橋と新宿の町並みに心踊る!ちょうど東京オリンピックに向けて大々的に工事が行われ、街並みがガラッと変わりつつあるころ。それでも新橋駅裏のごちゃごちゃした飲み屋街は今も同じ。新宿の東口ではワシントン靴店中村屋やタカノが見える。後ろに見える映画館は武蔵野館?アルタは勿論まだ無くて。現在の見知った風景と時間を超えて重なる瞬間の楽しさったら!
それにしても文子たんは、こういう役やらせたら最強小悪魔。父親含めて男の扱い方が見事すぎる。なんだかんだで我が最良の道を進むことが出来る、あくまでもナチュラル〜なしたたかさには参りますわ。居酒屋というかタイトルとおり「おにぎり屋」だけど、まあいいか…。お酒呑んでるし。

「洲崎パラダイス」

洲崎(すさき)は、東京都江東区東陽一丁目の旧町名で、古くは「深川洲崎十万坪」と呼ばれた海を望む景勝地。明治期から1958年(昭和33年)の売春防止法成立まで吉原と並ぶ都内の代表的な遊廓が設置され、特に戦後は「洲崎パラダイス」の名で遊客に親しまれた歓楽街であった。(wikiより)

今で言うと東西線木場〜東陽町駅の間。歓楽街を背にした人情味溢れる町並みもまた楽し。橋のたもとの呑み屋、その先の蕎麦屋、界隈に住む人々、遊びに来た人々。暮らしが見えてきて、それは今に繋がるんだなあ。特に蕎麦屋なんて「今もあちこちにああゆう店あるよ!」って佇まい。うちの街にもあったけれど、最近3階建てのビルに生まれ変わっちゃったんだなあ。
三橋達也のこちらをイラッとさせるグズグズっぷりは、モテキのフジくんにも通じるんじゃないかね…。