パラノイド パーク

「エレファント」で描かれる光景は、「目では」ひどく透明でくっきりと捉えているのに「こころに落ちるときに」ぼやけて歪んだ。私は緩やかに狂っていく描線を辿るしかなかった。「ラストデイズ」で映し出される光景、それは「既に焦点が壊れてしまった男の姿」であり、不穏で無臭のニオイが漂う空気に包まれてただただ遠巻きに眺めることしかできなかった。
「パラノイド パーク」で映し出されていたのは主人公アレックスの心象、その動きそのものだった。


スタンダードサイズのスクリーンサイズは彼の視野であり、映像は無機質な質感で、スローモーション、もはやスタイル化したその技はいつもと視点が違うから意味合いが異なっていた。時系列が前後することも音楽のセレクトもみな、アレックスの心象そのものだった。
そう、音楽はさすがだった。音楽というよりもサウンドスケープであり、音像がキリリと立ち上がっていた。エレクトロニカは胸のうちを浮かびだし、ニーノ・ロータ非現実の王国で鳴るBGMのように現実の声を掻き消すのだ。そしてエリオット・スミスをつかうのはズルイ、だってきゅううっと泣けるに決まってるジャンか!
そういった繊細につくりだされたひとつひとつは鋭利なニードルとなって、私のこころにキリキリと線を刻印する。
私はアレックスの秘密を共有してしまった。
・・・などとアオイことを書きたくなってしまうのダ。彼の容貌の中世的な様もうまく作用していて、さすがガス・ヴァン・サントだよねえ。
ガールフレンドであるオンナノコとか友達?のオンナノコとかそのまた友達のオンナノコとか、それぞれのタイプ分けがよかった。特に髪がボブの子の「見た目と発言のバランス」が妙にリアリティあった。ああゆう子、いるよねえ。