堀内誠一展「旅と絵本とデザインと」展

堀内誠一さんといえば、マガジンハウス。oliveやanan、ポパイ、ブルータス…これらおなじみのロゴは彼のデザインによるもので、ずらっ〜と並んでたけど、どれも今を生きてるのがすごい。植田正治鈴木清順を写真に起用した誌面もホンットかっこよくって痺れる。色校までも美しくって興味深い。oliveの表紙の、バックに載せるマドラスチェックの手描きがもう、もう。
絵本の原画も嬉しい。思い返すと子供の頃、母親が買い与えてくれた絵本は堀内さん画がいくつもあったし、その後自ら手にしたoliveに繋がること(勿論堀内さんのことは知らずに)はすごいことだなあ。

やっぱりマザーグース!よくわからなくとも妙に惹かれていたし、あとは「山んばと空とぶ白い馬」がこころに残っています。


「パリからの旅」の原画が圧巻だった。居住地となったパリの街を「絵地図」で紹介しているのだけど、びっっしり書き込まれたそれは堀内さんの「眼」そのまま、文章も絵も全て手書きで仕上げられている。手書きなのになんであんなにきれいなんだろう!おしゃべりみたいな文字は美しい行間や段組でピタっと収まり、軽やかなスケッチのなかに生き生きと且つ整然と配置されるそのバランスったら!パリ市内の地図の細やかさ!瑞々しくて、パリの生活が距離も時間も超えて伝わって来る。みんなに教えたくてしかたがないんだ!って勢いがあるんだけど、整頓されて読みやすいし、デザインはコミュニケーションだなあ。
堀内さんの意志を汲んだかのような展示構成になっていて、とても楽しく踊るように見ました。仕事量が膨大で、ひとつひとつが詳細すぎるから、見る側はテンテコマイだけど。
堀内さんの子供の頃の絵もよかった。お父さんの写真とか、こうやって堀内少年が育ったんだなあって。
こっそりとある小さな絵本コーナーもね、こどものころを思い出すようできゅんとした。

堀内さんはデザイン力に優れた天才だった。でもそのまえにひとりの人間としてみんなに愛されたからこそ、これだけの仕事を残したのだと思う。それにはやっぱり彼自身がまわりを愛したのだろうし、だからこそなんにでも好奇心を持って虫眼鏡で覗きながら、世界を自分の眼で見て、わたしたちに教えてくれたのだと思う。