昭和夫婦百景「おしゃべり奥様」「女は幾万ありとても」


このごろギャラリーに行けないなあと思ってジタバタした。見たい展示は大抵、東京の東エリアでやっていて、この頃の会社帰りじゃ見に行けないしなあ。。。とモヤモヤして、「すんません、今日はもう帰りますッ」と言い切って、そそくさと会社を出た。
地下鉄に乗って東へ向かい、川沿いの街へ。駅へ向かう人の列に逆流してギャラリーに着いた。ここの古いビルは夜に見ると趣が深まって素敵。今回の展示は森の中やその奥に潜む水辺を捉えた写真で、光の色が濃く淡く、静けさに満ちた瞬間が永遠に続くようだった。でも思ったよりも深く心に沈んでいかなかった。ここの雰囲気には合うけれど、点数が少ないのと人が結構いて落ち着かなかったからかなあ。薫りが消えてしまった。


再び地下鉄に乗り込んで、西へ西へ。どら焼きは売り切れだったので栗蒸し羊羹とあんみつ買って、映画館へ。今日は「おしゃべり奥様」を見る。「都営アパートが舞台、数組の団地夫婦が巻き起こすコメディ」とあらば、気になる気になる、しかも主演は中村メイコ!期待通りメイコは冒頭から喋る喋る、さすがの喋りっぷり。千秋実のダメ夫(久慈あさみの夫役)ぶりも素晴らしい〜。で、何よりもOPの給水塔ドーン、スターハウスドーン、に興奮。でもストーリーではどこがロケ地かよくわからなかった。もう建替えしたトコかなあ。それと東京タワー展望台からの眺め!国会議事堂方面、緑が多くてビルがなくて、、、わー。楽しい。


今回の特集では「女は幾万ありとても」も見に行った。こちらも団地が舞台のコメディ。児玉清浜美枝が新婚夫婦役で、児玉清のタラシっぷりがたまらん!高島忠夫のイエーイッぷりや眉間に皺寄せてる宝田明とかお調子者の藤木悠とかアオシマダーッとか、人物像がそれぞれ楽しくっていいのです。どこの団地かはやっぱりわかんなかったけど。。。こっちのほうが団地の生活を伝えてるし、銀座とか街も出てきて風刺映画として楽しい。昔の映画は何よりも、当時の風景が見られることが楽しい。面影を探しながら、全然違う所変わらない所を発見する。映画の「時代」を記録する部分って大切だと思う。


さて、見終わって映画館を出て、珈琲屋さんに寄った。以前こっち方面に住んでいたときは時折通っていた店だ。ブラジルのオールドビーンズを頼んだ。やわらかくて、とても美味しかった。強い主張はなくとも、ぐっと深く入ってくる味わい。この店は入ってくるなり「ホットで」と頼んでくるよな、味よりもお喋りといった具合の普通の喫茶店使いをされているけれど、別段「こだわってます」と鼻息荒くなく、あくまでも普通に街の喫茶店としてやっていらっしゃる。これはひとえに店主さんの人柄なのだろうなあ。会計時、とても美味しかったと伝えると、寡黙なご主人はちょっと照れたようだった。


写真見て、団地映画見て、珈琲を飲んだ夜。良い夜だなあ。