東京公園と都会のアリス、2つの演奏会と月食

12月の頭に寝違えて、1週間はずっと首を曲げにくいくらい痛くて、今も芯の痛さが少し残っています。ぐっと寒さが深まったせいもあるのでしょうか。

空気が冷たく澄んできて、差しこむひかりがやわらかくて、きもちがよいです。


思い返しながら12月前半のことをいくつか。
ある晩は下高井戸シネマへ「東京公園」を見に行きました。うむむ、これはチョット戸惑いのほうが大きかった。「東京の公園が舞台」という点で勝手に想像しすぎたのかもしれませんが、主人公の部屋を起点に、公園を幾つかと、中継点としてのバーと。それらが小宇宙として別々に存在しているように感じて、彼らは東京で暮らしているはずなのにハテどこの街なのかしら? それは監督にとってピックアップする部分ではないということだろうし、敢えてかもしれないし、でも「ゾンビ映画」や「瞼の母」は持ちだされているわけで、ううむ。あとで監督と評論家との対談を読んだところ、「あのシーンはあの映画のあれでしょ」とか映画論とかを延々語っていたから、ちょっとびっくりしたのです、よ。榮倉奈々ちゃんは大層かわいくって、染谷将太くんは相変わらず飄々とした魅力たっぷりで、そんな演技を見ていると、バーのマスターや歯科医師の役のヒトの語り口が妙に大仰しく思えたのでした。


そのまま続いてレイトショーで「都会のアリス」。スクリーンで見たの初めて!寂寥感と温もりと。理屈を超えて胸にきゅっと迫り、余韻が残る。ずっとこのままこの旅に揺られていたいなあとスクリーンを眺めていました。



そして週末は下町を散歩、路地をうろうろして、坂道を上って下って、寺をすりぬけて、猫に挨拶をして。夜は小さなギャラリーで行われた演奏会へ。ギターの音色がくうるりと弧を描いて溶けて、私のなかに吸い込まれていった。
この日は月食でした。

演奏会が終わって見上げたときはまあるい満月で煌々と光輝いていたけれど、帰宅してしばらくしたころには欠けたように青く光り、またしばらくすると天高く、赤くぼわんと光を放っていました。


次の日は昼間は公園と公園のあいだをお散歩して、夜はまた演奏会。会場は仏教の教会堂。和洋折衷のクラシカルで趣ある雰囲気によく合う唄とギターのささやかな音色。密やかで、あたたかくでもひいやりと、胸の奥の方からじわっと昂ぶる熱を併せ持つその音は、彼ら2人の人柄を感じさせるもので、中盤かなりぐっときてしまった。12月のこの時期に見ることが出来て良かった…。