2013年に鳴るmy bloody valentine

STUDIO COASTにて。まさかの来日公演が続く昨今ではあるけれど、それにしたって彼らのライブを見に行くなんて。1991年の来日は田舎にいたし、フジロックのときは「まんじゅうこわい」で行かなかったわけですが、今回ダメもとで先行に申し込んだら当たってホントにビックリしました。町内会の抽選ですら、店に置いてある券で相当引いても当たった試しなかったのに。そして当日が近くなって私用や仕事が重なり、よもや行けない…と相当ブルーになったもののナントカ会場に着いたのでした。以上前置き。

耳栓を受け取り、2階席を死守出来てほっとしながら開演を待つ。メンバーが登場し、ケヴィンがギターを手にした瞬間にカーッとなる。
最初の音が岩のようにゴツゴツしてたから躊躇したけどいつの間にか荒波の海に飛び込んでいた。そこからは無我夢中なのかなんなのかよくわからない状態だった。目を閉じる。吸収する感覚を耳だけに集中する。まぶたに刺す光はモノクロなのかカラーなのかも掴めない。執拗に重ねられて形を失くした奥にメロディを微かに感じ取る。まぶた同様に、時折耳栓をしたり外したり。視界は開閉自由だけど聴覚は外界と直に繋がるままなのだな、普通は。そして音は耳だけではなく、皮膚にも存在を伝え、体内に浸食していくのです。浮遊とか陶酔とか耽溺などを許さない音。

特に最後のYou Made Me Realiseが荘厳圧巻で、凶暴で壮絶で地響きが轟き、これまでが空気中を揺るがしていたとしたら、地底から沸き上がってくるうねりが場内に吹き荒れ、頭の中は白くなり、体がここにないような感覚に陥った。感傷とかなんとかそんなものとっくに剥ぎ取られてしまった。今思い返すと、音圧にも個性が出るのだなあと灰野さんとか池田亮司さんのライブでの感覚が蘇りながら交錯する。

lovelessというよりは Isn`t Anything〜You Made Me Realise〜それ以前のアノラッキンな昂りが存在しながら(!)、ケヴィンremixを経て、2013年の今ここで鳴っている音であることに驚かされた。だからまた見たいって強く思う。
リズム隊がよかった!重くないけど確かな音。4人の菱形の関係性が2階から見下ろしてると興味深かった。これだけの強烈な音にもかかわらず、繊細であり愛嬌も感じられて、ケヴィンという稀有なミュージシャンの突出した才能(”音遊び”とか”発見”が好きなんだろうなあ)だけで成り立っているバンドではないのだなと思う。ビリンダさんの佇まいは美しかった…。女性ミュージシャンに有りがちな自我を感じさせないことも含めて、カッコいいなあ。
冠としてのシューゲイザーだのマイブラって言葉はいったいなんだったのだろう。音源だけでは決してわからなかった。20数年の時間を経て、ようやくわかった気がする。当時のライブとは印象が異なっただろうし、今の歳で今の音をライブで聴くことが出来てよかった。ケヴィンの突き詰め方はなんともタフであるし、そこが有象無象のリヴァーブを装飾しただけのフォロワーと違うことを再認識した。このノイズっぷりはノイズミュージックシーンが一般的な地平に浮かんできた時代だからこそ享受される気もする。

遅かったし特にお腹も空いてなかったからご飯食べずに帰宅してお風呂入ったら、体内に蓄積されたノイズがブワーーーっと浮かび上がってきて湯気の中で返り血を浴びたように埋もれた。朝起きたら体全体が空っぽになってて、フラフラしてしまった。

おまけ:「 Upside Down 〜クリエイション・レコーズと私」 ・ 「ハッピー・バレー