不気味な肌に触れる

先月オーディトリウムで見ました。濱口竜介監督の作品は「これが映画です」という若さ故の真面目な観念に満ちていて、息苦しいところが私にはある。評判の高い「親密さ」は255分飽きずに見たけれど、私にとっての映画ではないと感じてしまった。
新作である「不気味なものの肌に触れる」は60分に満たない作品であり、最後には「To Be Continued」と綴られて驚いたけれど、いい意味でこれで終わりでかまわないと思わせられた。後味、余韻がすごく好きだ。
どのカットもパシッと決まっていて濃厚で切れ味鋭く殺傷力が高い。この幾何学的で的確な気持ち良さはたくさんの映画を見て叩き込まれた感覚なのだろうか。終始ブルーがかった冷たいグレーで靄のように覆われているけれど、染谷くんが河原でひとり踊るシーンの禍々しい神々しさったら!そして彼の”死んでいる”まなざしが終始素晴らしい。
不穏でぞみぞみと漂っていて、なにかを予感させるけれどその奥の髄にあるものは見えなくて、掴むことも触れることも出来ないまま起こってしまう「こと」。示唆に富んでいるだけに、タイトルで方向を促してしまうのは残念な気がした。