五反田恵比寿

金曜日の会社帰り。五反田に降り立ったのは何時ぶりのことだろう。工事中のJR改札口をでて、古いスーパーマーケットという印象だったトーキューがOL向けに改装されたけれどその横に見える池上線へ向かう連絡橋は古いままで、ロータリーの向かいにはまだモスがあった。
ソニーへ向かう通りを歩くと写真屋や味噌屋があって、でもそれは真新しいビルの1階に「残された」といった状態だった。もう何代もこの地で商売を続けてきたのだろう。街の変化に合わせて店舗も変わったというわけだ。


途中おなかが空いたのでパン屋に寄る。ここの白いハチミツと松の実が入っているパンが好き。
角を曲がると出来たばかりのような大きな高層マンション群が見えた。辺りを一掃して建てられたみたいな。数年前とはごっそり風景が変わったのだろうなあ。その「ごっそり感」が奇妙だった。郊外の新興住宅地みたいだったから。ここがどこだかわからなくなる。
そしてギャラリーTEOに着いた。
AKI INOMATAさんのインスタレーション。広くはない白い空間の天井まんなかにしかくい装置。それはICCで見た坂本龍一と高谷史郎による「life」を思い起こすのだけど、ここでは「上から落ちてくる滴を透明な板で受け止めて、その波紋が床に投影される仕組み」になっている。
幾重にも広がる波紋のなかに立ち尽くす。時折シュッシュッと滴が機械から落ちてくる音がするのが予期せず可笑しさ。ぶわあぶわあと部屋の四隅に広がり行く波紋は水面に足を浸かっているような感覚でもあるのだけど、私がなにやら必殺技を出してるみたいなキブンにもなってくる。その波動を眺めていると平衡感覚が狂ってきて、くらくらしてくるのだった。
ここは天井も低く閉鎖的な空間なのだけど、ギャラリーによって雰囲気ががらっと変わりそうだし他のところでも見たいなあ。
http://www.galleryteo.com/exhibitions/current.html
で、何故このギャラリーへいったかというとそもそも、ようやく移転オープンしたナディッフに行きたかったから。恵比寿なので他になにか見たいなあと思ってネットを探り今回の展示を見つけたのですが、こういう出会いがまたウレシイのです。ここのギャラリーは原美術館とセットで行くのがいいかも。
というわけで恵比寿へ移動。
路地を進んで電柱の案内に沿って曲がるとギョッとする。

古い古い木造アパートがまず目に入り、その向こうに真新しい白いガラス張りの建物が見えた。あれがナディッフか!


中へ入る。そんなに広くない。ぎゅっと詰まってる。ゆっくり見て回るという感じではない。ちなみにCDは若干あるけどコーナーとしては存在していない。美術書を扱う場も増えた今、「ここで」何が手に取れるのかはこれから楽しみにしていこうと思う。
B1のギャラリーは水に水没した廃墟のようなインスタレーションだったけども、外の「木造アパートとナディッフの対比」のほうが遥かに興味深いのは皮肉というかまさかそれを狙っているのかどうか。恐らくこのアパートが壊されるのは時間の問題だろうなあ。このアパートの佇まいが住む方々の生活をじゅっとあぶりだしていて、それがあまりにも強烈だった。

::::::::::::::

恵比寿から歩いて渋谷に向かう。

1階が都バスの車庫になってる都営アパートはいつ見ても壮観です。
歩道橋から線路を眺める。JRと東横線が交わるところ。東横線副都心線と繋がって、渋谷〜代官山間は地下化するとのこと、もう何年かしたら、この眺めもなくなってしまうのだなあ。

すっかり暗くなった。この線路沿いを何度歩いたかわからないけど、ここを歩くのはいつもいろんなものに出会った後だなあ、とアレコレ思い出しながら渋谷駅へ着いた。