damon & naomi @ 月見ル君想フ

今日は実に奇妙な天気で、朝から寒い寒いと着込んで外へ出たら予想外に、もあんと生暖かい。雨はやわらかく降るのに風は強く、折り畳み傘が飛ばされそう。電車で移動、到着すると再び寒くなっていたけれど、お昼ご飯にカレーを食べてるあいだに明るくなってきた。店を出て再び電車で移動、吉祥寺。やっぱり已然と曇り空、映画を一本見てからまた電車に乗リ込む。中央線の高架から見渡せる空はどんよりとしていたけれど、厚く覆う灰色の雲はレイヤーになっていて模様のようだ。その層を辿っていった先、北の西よりの裾が裂けていて、そこから薄い水色が覗き、オレンジ色の光が差し込んでくる…。電車を降りて建物の合間に見える空は重い灰色の奥に赤みを帯びてきて、パレットの上で混ぜ合ったような色具合。といった案配で、刻々と移り変わる空の表情はなんともドラマチックだった。

すっかり暗くなって青山へ移動。"月見ル君想フ"という会場名はdamon&naomiに良く似合う。
damonさんがジャッとアコギを鳴らすだけでぐっときて、涙腺が緩む。手の動き。優しく柔らかく慈しむような仕草はそのまま音に表れる。damonさんのひととなりそのもののような、音。そしてnaomiさんがすうっと唄いだすだけでもぐっときて、涙腺が緩む。たおやかで凛としている佇まいだけどほわっとしていて、naomiさんが着ていたワンピースの白いシフォンのよう。(あいかわらずお洒落で素敵!)
音が鳴った途端に空気が一転してしまう。朝、木立に囲まれた湖からほわほわと立ち上る靄のような。夜、ストーブの上に載せた薬缶からしゅんしゅんと立ち上る湯気のような。窓の向こうに浮かぶ白い月をぼわんと囲む光のような、そういう空気感に包まれていた。
目をつむって聴く。そうやって自分だけの世界に入り込む。目を開けるとdamonさんとnaomiさんのほのかに嬉しそうな顔。時に唄いながら苦し気になるのはこころを絞り上げるからなのかしら、そんな表情を見ていると胸がきゅっとしてしまう。
ああ、この二人は菩薩さまみたいだなあ。なんとも慈悲深いお姿をしている。なんて思うとdamonさんはオモシロMCを繰り出し、暴走気味なその様子をnaomiさんはしょうがないわねえと微笑んで見守っている。こんな2人の仲がとても素敵。
後ろには栗原さんが目立たないようにいるけれど、ひとたびギターの音を出せばモノクロのサイケデリアで空間を彩り、存在感を見せつける。この人のギターワークにはココロをぐいいと刺す魔法があって、そこでまた涙腺が緩む。
ghostの荻野さんと瀧澤さんも加わって木管楽器を響かせる。重層する音の舵を取るのはdamonさん、その姿もまた良いのだなあ…。みんなを見守るような彼の表情がとっても好きだ。髪も薄くって、もうオッサンなんだけどね。

彼らの唄は時を超越した岸辺で鳴っているけれど、同時に時の流れをとても感じる。Galaxie500を初めて聴いたのは高校生のときだった。「More Sad Hits」のときはZESTで買ったなあとか、その時々の私を思い出す。これからも私の日々のなかにひっそりと、でも確かに鳴り続けることだろう。
昨年のライブの感想→「damon&naomi at o-nest

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