あの夏の子供たち


良かったなあ。いい映画だったなあ。光がとても印象的。やわらかくしろいひかりが。
何を持ってして「良い映画」といえるのかはわからないし、正解はないと思うけれど、私はこういう映画が好きだ。映画が大好きで遂に製作するに至ったとしても、監督が映画の中だけに生きているのではなく、この世界にきちんと生きているから。「生きる」というよりも「暮らしている」という言葉が合うかもしれない。
太陽が光を放ち、闇を作り、人がいて、彼らの住む街があって、物があって、空気が揺らいで、私やあなたの佇まいや表情がつくりだされる、それを過剰にならず誠実に捉えている映画だと思った。敢えて語らなくてもそれはそれと伝わるし、ちょっとした言葉の中に動かす力があるし、上着やカバンはいつもおんなじ*1、私たちはそうやって暮らしているのだ。
ジョナサン・リッチマンの「EGYPTIAN REGGAE*2」に乗って(!)、 パリの街並みにタイポグラフィーがダンスするタイトルロールから、スッとスクリーンに吸い込まれた。
ミア・ハンセン=ラブのたおやかで強靭な意志に満ちた”幸せな”映画だった。

長女役のアリス・ド・ランクザンは「夏時間の庭」にも出演していたけれど、彼女のまなざしと背筋を見ていると、フランス映画の伝統がこうやって継承されていくのだなと思う。素敵な女優さん。

*1:長女の服装がまさにソレで、青い肩掛けカバンにジャケットはお決まりで、合わせるのは花柄スカートだったりジーンズだったり…

*2: このPVサイコー!