「リアル〜完全なる首長竜の日〜」

気配。スクリーンの隅々に渡って、光と音によってつくりだされる意識的な無意識。くぐもった色彩、そよぐ風や影のかたち、細やかに奥底で鳴り響くドローンに少しづつ体を絡めとられてしまう。奇妙な画像処理も面白かった。
ただ全体的に、立ち上がってくる不穏の「深度」が甘い気がしてしまった。妙に説明的な台詞も多く(冒頭で今の状況が台詞で語られる…)、視覚的にもわかりやすく提示してくれた感じがする。後半、CGでドーンと出てきた”物体”もあって、ちょっと驚いてしまった。これまでの作品には研ぎすまされた高精度で緻密な画面構成と、いい意味でチープで素っ頓狂で笑える部分が、絶妙なバランスで配合されているように思っていたんだけど、今回はそのへんがアンバランスに感じてしまったのは、いろいろな配慮があったからなのだろうか。見えないものを感じ取らせることを抑えたように思えた。
なによりも気になったのが主演二人の衣装で、実際は勿論ブランドものだろうけど…安っぽく感じたのは何故。。。(すみませんすみません)で、衣装設定による意図的なものかなんなのか(うーん)、ふたりの体が終始周りから浮いた印象なのだなあ。絵的に美麗ではないともいえる。「なんで二人とも全身グレーの服なんだろ」とか、後半の「エンジのワンピース(胸がパツパツで丈が上がってる…)にゴツいエンジニアブーツ」というちょっと古い合わせ方になんでしたんだろーとか、そういうの考えるのは楽しい。衣装はおなじみ宮本まさ江さん。
佐藤健綾瀬はるかも演技云々よりかは身体能力が高くて、ぴょ〜んと飛ばされたり、ダッダッダッと走ったりする様がカッコヨカッタ。中谷美紀の胡散臭さを伴う美しさは神々しいレベル(褒めてます)。声のトーンがタマラン。
映画的嘘を積み重ねながら浮かび上がる現実の嘘ホント。廃墟と化したレジャー施設で瓦礫を片付けながら「じゃあ一体誰が悪いんだ?」という問いの答えが観客に託されることに誠実さを思う。そして現実が虚構を凌駕する今、虚構を作り出すにも大人の事情をわんさか盛り込まなければならない哀しさもどうしても思ってしまう。