クリスマス・ストーリー


家族とは既に定められた血の繋がりであり、「選ぶこと」が出来ない。その糸の絡み方も引っ張り合いも解れ方も、家族間でしかなし得ないもので、その糸のむこうには「幼い頃からの、日々の何気ない光や音が降り注ぐ風景」があるからこそ続いていくのだなあと、ぼんやりと私のなかに眠る光景を思い出している。穏やかで美しい湖にみえるけれど、実は張り詰めて今にも決壊しそうなヒリヒリしたそれを抱えながらなんとなくやり過ごしたり、逃げ出したり。けれどその湖を絶対的に否定することはやっぱり出来ない。お互いに何かを抱えながらも、クリスマスの夜にみんなで「十戒」を見るような”慣習”は血のつながりがあるもの同志だからこそで、そんな積み重ねがあるからこそ捨てきることは出来ないのだ。西洋ならばクリスマスによって「家族」というものを振り返るとしたら、日本ならば大晦日〜正月になるかしら。
そんな、家族間の見える/見えない糸が長年紡いできた「刺繍」をさらりと見せてくれた。底は深く重いけれど軽やかに。いい意味でデプレシャン歳取ったなあって思うし、彼の新作を(数年遅れでも)見ることが出来て、嬉しい。クリスマス直前に見れて良かったな。