「ゴダール・ソシアリスム」と小津安二郎「彼岸花」で締めくくる今年の映画鑑賞

2010年〆の映画として何見よう?と考えるだけの作品が今公開されているとは、なんて贅沢なことなんだろう。
で、新作で選んだのは「ゴダール・ソシアリスム」。うん、完璧。

もう、ほんっと凄かった、面白かった!
いきなり「ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ」とサイン波の高音が発動し、バッバッバッと「ゴダール・フォント」が画面に打ち出される、わわわ!痺れた!持って行かれた!カッコ良すぎる! で、ふと思い出したのは池田亮司。ゾクゾクした!
そして海の青の美しさ。デジタルのざらつきと滑らかさの共存。そこへ「音」が暴力的に、意志を持って、左右中央から殴りかかってくる。人物が記号化する一方で音が存在感増すのは面白い。ゴダールのつくりだす「音響設計」には毎度参る。爆音映画祭で見ても最後までつらさはなく面白いもの。
字幕を負うのは止めて、感覚を「耳60%目40%」使うことにした。からだいっぱいで受け止めたいから。
かといって「言葉」をおざさりにしたくない。というのもふと目を字幕へ下ろすと、音と同じくらい強度な言葉が並んでいるから。これは再見するし、シナリオで補足しつつにしよう、そんなにたくさん吸収出来ないもの。

ドーンドーンと重い球ばかりが投げられるのではなく、アルパカや黒ロバがぼーっとしてるショットが出てくるの、アレ、反則過ぎるよ!なにあれもう!緊張あふるる世界が途端に弛緩する。そしてまた世界は緊張し混沌とする。そしてスパッとスクリーンからこの現実へぶん投げられたまま、永遠に止まらない。
全てをかっさらってしまう、恐ろしくも愉快な映画だった。歳取るほどに過激になるなんて、スゴい人だよなあ。


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さて、28日仕事納めの日。挨拶もそこそこに出てくることが出来たのでハテ、最後に何見ようかな?と考えた。新作はこの間のゴダールで〆にしたいし…とそういえばの神保町シアター、只今「小津特集」で本日最終回は「彼岸花」とな!スクリーンで見たことない!これに決めた!

彼岸花 [DVD]

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タテヨコのライン構成に、赤の小道具と建具やアクセサリーの青碧にニットのグレー等のアクセント、そこへ着物や洋服の柄合わせが何とも粋!ああ、なんともキッチリしてて素敵だなあ。こうやってスクリーンで見るとこれまで以上に突き刺さってくる。マチスの絵画みたいに(例えば「小さな青い部屋」や「赤い部屋」などの室内を描いた作品)「自分にとって美しい”現実”をつくってしまう」ところが好きだ。あ、あの中華屋行ってみたいなあ!

役者さんのそれぞれの表情もほんといいな。佐分利信のからだ悪そうな顔色もたまんないけど。
こころのなかでツッコミいれながら見るの楽しいねえ。「いきなり会社来て”娘さんをください”はねーだろ!」を始めとしていろいろあるけど、まあ、ケッコンを本格的に進めるには「第一アクション」と「第一印象」って大切よねえ。。。交わされる言葉にアッアッ!と思うのは、前回見てからそれだけ時が立ったってことなんだろな。佐分利信の矛盾ある発言に父がだぶる…。

ワッハッハと場内笑い声が幾度もあがって、あったかな気持ちになるのは映画館ならでは。年の瀬にいい気持ちに包まれながら家に帰った。ゴダール新作と小津安二郎でシメるなんて、ほんと贅沢!今年も映画館に感謝!