展覧会いくつか〜カンディンスキー・中平卓馬・藤本涼・秀英体


うつくしい色の空にこころが高鳴ります。

カンディンスキー青騎士展 〜 三菱一号館美術館

青騎士

青騎士

以前見た「カンデンスキーとミュンター展*1」は素晴らしかった。この2人大好きだなーって強く思った。だから今回の展覧会も嬉しかったなー。カンデンスキーの写実から抽象へ向かう時期の絵がとても好き。色と形が溶けていく。見たままではなく、彼のフィルターを通して、こころの高ぶりそのままに映しだされる「風景」が好き。そしてパートナーであったミュンターの絵も好き。人物の描き方が好き。色と形と。なんとも愛らしい。ちょうどタイミングよくて、人が全然いなくて、部屋のなか独り占めで彼らの絵を眺めることが出来て、しあわせだった。
それと最後の部屋、1900年初頭当時に彼らが撮影した写真が展示されていた。それがめちゃくちゃスナップ写真なの。ちょう日常風景で、びっくりした。

中平卓馬写真展 「Documentary」〜 BLD GALLERY

中平卓馬 Documentary

中平卓馬 Documentary

中平卓馬の05年頃から10年に至るカラー作品約150点を展示。縦位置の写真がずらっと2列で間隔詰めて並べられ、対象はすべてズームアップ。静的なのに異様な力を感じる。なんなんだこのチカラは…。対象ににじりよりながらも感情が立ち上がらない。そのもののちからが感じられる。ぎゅっと詰まった写真にぐわっと掴まれてしまう。石像のような寝姿と石像と猫。植物と電線。文字。赤。緑。青。黄。黒。このバランスも絶妙。圧巻。言葉が出ない。

第5回shiseido art egg 「藤本涼 展」〜 資生堂ギャラリー

昨年ナディッフで行われた個展の際にも記したけれど、私は藤本さんがまだ芸大在学中のころの2007年の展覧会で作品を見て以来、ファンです。最近目にする機会が増えてきたなあと思ったら、今回はなんと「shiseido art egg 」受賞ということで、とっても嬉しい。
銀座の雑踏からすっと資生堂へ入り、ふっと暗くなる地下へ向かう階段を下りていくこのアプローチと館内の白い高い天井は、藤本さんの作品にとてもよく合っていた。ああ、それは暗闇から立ち昇るのか、暗闇へ消えて行くのか、ふっと浮かんできてほっとするような、それとも掴めそうで掴めない、ああ、離れてしまう、行ってしまう!…そんなふうにあたまのなかがくらくらりとしながらモノクロームの煙のような写真を眺めていたら、涙がこぼれそうになってしまった。

秀英体100 〜 ggg

明治45年(1912年)に誕生し、現代まで使用されているDNPのオリジナル書体である「秀英体」生誕100年の記念展。 監修に永井一正。チカラ入っとる。
秀英体とは、DNP大日本印刷の前身である秀英舎のころに出来た書体で、これを使って25組のデザイナーが四季をテーマに制作したポスターを展示。秀英体といえば思い浮かぶのはこれ。
銀花 2010年 03月号 [雑誌]
杉浦康平。あとやっぱり葛西薫のデザインワーク好きだなあ。平野敬子もいい。お二人に共通して感じるのは、品があって静謐で凛とした佇まい。中島英樹もいいなあ。彼といえば「90年代」なんだけど、アクがいい意味で抜けてカッコイイ。「00年代」な長嶋りかこのもいいな。各デザイナーの個性はその作品からは勿論、コメントにも表れているのが興味深かった。「デザイン」の捉え方が出ていて、形先行の人もいればコンセプト先行の人もいて、作品とコメントがブレてない。当たり前だけど。
地下では秀英体の「歴史」や「活字の号数ごとの文字やデジタルフォントとの比較」などでお勉強。そして興奮するのは「活版印刷の活字棚」、秀英体が使われている出版物も紹介されていました。
こちらのサイト、楽しいですよー → http://www.dnp.co.jp/shueitai/


ふらっとギャラリーや美術館行って作品を見ると気分が入れ替わる。私にとって散歩と同じ効用がある。見知らぬ誰かや風景に出逢うのと似てるのかもしれない。アミューズメント化・イベント化した「芸術鑑賞」にはどうしたって、違和感があるのだ。

*1:うちの図録見たら、96年セゾン美術館だった…うわああ!