湿った空気、あわいの記憶。

7月も半ばになるけれど、思い出すのは夏の日差しではなく曇天ばかりだ。そういえばあれは、3日のことだった。
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湿度が高く重い空気の街を歩いていたら、いつのまにか海の底をのろのろと泳いでいた。脳内で再生されるのは”baselines”。その晩はライブに行ったのだけど、今回の選曲は自分が好んで聴く音世界ではないと、改めて実感してしまった。個々の演奏は素晴らしく、目が見開く様が幾度もあったものの、ぐっと入り込めずにいた。私には曲調よりも歌詞が印象的だった。このメンツでの過去数回のライブにあった「学祭」ノリが抑え気味だったのは、追悼だからだろうか。
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そうそう、この日は横浜のみなとみらいへ出かけたのだった。馬車道駅で降りて歩いていくと海の匂い。ああ、横浜に来たんだな。会場をBankARTって覚えてて行ってみると、あれ?どこから敷地に入る?いや、無い?!と詳細確認すると、BankART SILKとあって、シルク博物館内だった。そういえばBankARTのあの建物は解体されたんだった。切ないよぅ。シルク博物館は設計 坂倉準三だけど、あんまりピンと来ない……。
藤本涼さんの写真展「クラウドフォーカスの行方」。 記憶のかけらのような、不穏な空気のような、あわい、が仄暗く浮かんでいた。暗室の展示が特に良かったなあ。風景なのか抽象なのか、山なのか空なのか、見るたびに変化する。暗闇に点在してぼぉっと光って浮かぶさまを眺めていたら、泣きそうになった。藤本さんの作品を初めて見たのは2005年頃の恵比寿の小さなギャラリーで。そのときから作風は変化せずに、でも深化していて、今回も射抜かれた。しかも写真集付で!久しぶりに拝見できたし、嬉しかった。
ニュース詳細|BankART1929 横浜の創造都市界隈拠点


ここのスタッフの方に教えていただき、近くにある”ギャラリー パリ”へ。
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建物が素敵。あとで調べると、旧三井物産横浜ビルで、明治44年に建てられた日本初の鉄筋コンクリートオフィスビルだそう。美しいお姿。設計は遠藤於菟でした。1階のギャラリーへ入るとテレピンの匂い。井上絢子さんの「さりながら」。油彩の作家で、光でぼやけた色彩が美しく、藤本涼さんと共通するものがあった。


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横浜のこの界隈は、私の生活圏からはちょっとだけ離れたエリアで、渋谷から(いや、埼玉県和光市から!)スッと電車一本で行けるのに、非日常感ある不思議な空気が漂っていて、時々訪れるたびに迷い込んでしまうのだ。