鮎の道、戦車の道
郊外に広がる団地の裏手には雑木林があり、ざっくりとした境目に丘陵地を掘り起こして整備したことが浮かんでくる。樹々のあいまの小道を進む。
ふっとかつての往来が立ち上がってくるようだ。
この道は「鮎のみち」というらしい。相模原の津久井湖から三軒茶屋へ繋がる旧街道、津久井で取れた鮎を江戸の街まで売りに行く際に使った道とのこと、こういうのを知るとぶわっと毛が逆立ってくる。
山道といった具合の狭く起伏に富む道なりを、枝の隙間からこぼれる光を感じながら歩いていくと
給・水・塔!色合いがかわいい。
角を曲がるとぐいっと道が広がった。
っとこんな立て札が。
「戦車道路」?! なんて物騒な名前だけど、かつて陸軍が相模原の施設で生産された戦車をここで試験走行していたのだという。たっぷりとした幅でなだらかに進みながら時折カクカクと曲がる道には今はジョギングをする人が行き交う穏やかな雰囲気しかない。鮎、そして戦車、時代によって変わりゆく道の名前。もうこの先、敢えて名をつける必要がないように。