変貌を強いられる街

先日のこと。イメージフォーラムから青山通りをてくてく下って、歩道橋渡ってガソリンスタンドの向こうの道を曲がる、と、ドーンっと別世界が広がっていた。わー…。瞬間移動で違う場所に来ちゃったみたい。。。渋谷駅前に出来た商業施設が鎮座していた。以前の、あの秘密の抜け道みたいなの好きだったんだけどな。カクカクした道なりに本屋や飲食店が並んでて、駅へ繋がる渡り廊下に行くトコとか…。ちょっと暗い感じがあって。
この変わりように六本木ヒルズが出来た時のことを思い出した。あのときも、麻布十番のほうから歩いてきたときにドーンと別世界がいきなり広がっていて、体が止まってしまった。
時代に合わせて街が変わっていくのは当然で、自分のなかの「地図」が書き換えられなくて、違和感があるのはしょうがない。うん、まずは中に入ってみよう。
金曜の夜、けっこう賑わっていた。地下の菓子売り場を覗くと、ケーキ屋やマカロンなどすでに人気の店が並ぶ。和菓子は大手ブランドの新業態である「西洋和菓子」なものばかりで、パッケージは目を引く可愛らしさだろうけど、私には安っぽく見えるし、肝心のお菓子が「おいしそう」に見えないんだけどなあ。なんとも企画書で出来上がったお菓子。消費する側も、老舗のお菓子を「パッケージがカワイイ」といって、味に触れること無くキャッキャッ取り上げる昨今だから、致し方ないのだろうか。


ファッションや雑貨のフロアに行くと、さほど広くないスペースにぎっしりとテナントが並んでいる。ひとつひとつの店はこのくらいの狭さでないと、回せないのかなあ。ぎっしりと細々した商品が並び、通路は狭く天井は低く、囲まれているような圧迫感がある。デザイン性が高く主張しているものばかりなので、全方位で刺激を受けている気になる。「オシャレで独自性のある珍しいもの」「長く使える良いもの」を主軸に置いているのかもしれないけど、結局のところ「最近どこでもよく見かけるなあ」であったり、中には館内のテナントどうしで同じものを置いてあったり。


そういえば、このビルの外観はなんでゴテゴテしてるんだろか。すっきりしたデザインとは真逆で、美しいとは思えないなあ…とエレベーターを上がり、展望スペースがあったので8階で降りた。どんな光景が…と窓に近寄って愕然とした。

なんだこのゴチャゴチャさは…!向かいの駅とデパートにほとんどの視界が奪われ、周囲には細かくビルが乱立し、広告が目にチラついて(一時期よりは少ないか)、なんという落ち着きのなさ!空のなさ!
そうか、渋谷駅は谷底だからよっぽど高い階にいかないと眺望は望めないのだ。それにしてもこの街は、継ぎ足し付け足しでつくられてきたのだなあ。この景色にさっき考えていたこのビルの外観と結びついてしまった。あれは「渋谷の街の姿」そのものを表しているのかしら。
今後、この界隈は再開発で変貌が進むらしい。JRの線路も移動し、駅上のデパートも無くなり、この景色はだいぶ広がるのだろうか?
この商業施設は「未来の渋谷の象徴」として建てられたのだろう。しかし、どちらかというと「これまでの渋谷の象徴」のように思えた。近隣のデパートもかつてこの地にあった”会館”も、私には「ひとむかし前」の雰囲気しかない。しかし出来た当時は賑やかだったのだろう。今のこのビルは数十年後、どんな存在になっているのだろう。