ムーンライズ・キングダム

祝日で休みのはずが出社日…が!早めに帰れたので、これは映画だねッと慌てて掌で調べると、今からちょうどうまく間に合うのが「ムーンライズ・キングダム」!早く見たかったし、上映時間も短いから遅くならないし、これだ!

この映画は「かわいかった!」と一言で済むかもしれない。この「かわいい」という形容詞はもはや世界共通語であり、感嘆詞のように使われる便利な言葉になった故に、下品な安っぽさ満載で吹けば飛ぶよな…だったりする。しかしウェス・アンダーソンが作り出すのは品があって軽やかながらも強かな「かわいい」だ。完璧なまでに構築された場面構成と色彩設計でデザインされた映像にダンスする。
でもそのダンスはちょっとぎこちない。キッチリと造成されているのに奇妙な歪みがあって、カラフルな色使いは褪せていて、登場人物の「ぽつねん」を感じてしまうのだ。執念をシュガーコーティングしてる感じ。だからすっと入っていかない要素も持っているように思う。
ストーリーはグダグダ語らずに展開もやけにアッサリしてるけど、目に映り耳に入るものが濃密だからよい案配なのかしら。ボーイスカウト*1の服装の細かさ*2だのおじいちゃんの緑の正ちゃん帽に赤いウールコートだの、フランソワーズ・アルディだの青少年の管弦楽入門だの、好きな児童文学の表紙*3だの、大人の役者陣のことだの*4、子供たちの動きとか、スピーカーとか、地図とか(!!!)、、、ピッときたポイントはたくさんあって、それだけに、つらつらーっと感想書きにくいこの気持ち*5
浜辺でのあのダンスに、二人は今この刹那な瞬間を永遠に引きづるんだろうな、と思ってしまった。

嵐の中サムくんと警視さんが手を握る瞬間に至るくだりの動きが素晴らしかったし、エンドロール!なんかも、あれをやりたいがための映画だったんじゃと思えてくるくらい素晴らしく楽しかった。そして双眼鏡のズームアップする視界=世界が近づくって魔法! 映画とは何たるかが込められているようで、「ぽつねん」を感じながら、映画というのは総合芸術だなあとしみじみした。ひとりの映画青年の妄想にたくさんのひとが魅せられ尽力するってすごいな。あらゆることにこだわりを持っていればそれだけ可能性の翼が広がる王国なんだなあ。

*1:団体行動が苦手なのを見かねてガールスカウトに入団させられてた小学校低学年のころを思い出して泣きそうになる私。ガールスカウトの服装ってかっこわるいんだよねえ。嫌だったなー。んで、規律もって行動したり唄ったりするのがホントに嫌だった…

*2:これ、衣装として全部手作りだそうな。。。

*3:架空の小道具にこの作り込み!

*4:警視…!!

*5:川勝さんによるパンフを見たかったです