HOWL/OWL

ただ聴いてカッコイイ!って昂るだけで、放心するだけで、それで良い。

先週10・11日に下北沢club queで行なわれたライブは久々の2デイズというだけでも驚きなのに、「新譜発売直前お披露目会」だったことに今の彼らの心境が伺えるようでした。家でスピーカーから聴くよりも、外でヘッドホンから且つアルバム単位ではなく楽曲単位で聴かれることが普通になった今、アルバム全曲を通しでライブで聴くなんて(しかも発売前!)、彼らの思いをそのまま受け止められるめちゃくちゃ嬉しい試み!それに収録されてもライブではやらない楽曲も多いので、生で聴ける貴重な機会でしょう。
1日目の「HOWL」サイドはカッコイイー!って盛り上がる瞬間が幾度もやってきて昂った!しかしながらなんだか各音がバランスを欠いたように思えたのと、ポップとロックとロックンロールがなんだか馴染んでいないように感じて、終始圧倒されっぱなしにはならなかった。それは私も固唾を飲むように聴いていたし、彼ら自身も固かったからかもしれなくて、アンコールでの「sludge」ではヤマジさんが解放されたかのようにピョンピョン飛び跳ねてギターを弾く姿が印象的でした。
2日目の「OWL」サイドはゲストでチェロの佐藤研二さん*1が参加した「cyan」(これはhowl収録)の後半の長尺演奏が凄まじかった…!重なり合う音の波の渦の中に吸い込まれていった。混沌としているのに澄んでいる、不思議な渦。以前からライブで聴いていた曲だけど、後半部に追加されたこんな展開が待っていたなんて!「mole soul」は曲調の変容具合が面白くって、中盤ぐわっとスイッチが入って以降の展開だけでライブやってほしいほど。サイケデリックな色彩は「9souls(trek)」のキラキラな陶酔感よりは、こちらのほうがどよんと重く沈んでて好きー。こういうの延々聴いていたい。そしてWWWで聴いて以来、「in my head,in my head」と頭のなかで旋回していた「owl」の持つスケール感は、もはやqueでは窮屈かもしれません。もっと広く高い空間で聴きたい曲。


HOWL

HOWL

OWL

OWL

そして本日、発売日。この数年で世間は大きく変わったけれど、彼らにまつわる状況も今までに比べれば随分と変わっていった。とはいえ音は変わっていない。けれど、違う。鳴りが、響きが、光が、違う。
ソリッドでポップでラウドで幻惑的で切なくて高揚しつつ泣いてしまう。相反する形容が重なり合うdipらしさが詰まってる。2枚に分けてもそれは変わらず、ギターロックバンドとしての多彩な強さを改めて感じる。いつからかギターは鋭さと共にたおやかさを蓄え色彩に溢れ形を広げ、唄声には不思議な郷愁が滲むのだなあ。
あくまでも骨組みはこれまでのアルバムを思い起こすくらいにそのまま、しかし流れる血には酸素と栄養が行き渡り、稼働域が広がってぎゅいんぎゅいんと鳴らされる音はとっても若々しく瑞々しい!光源強めのライティングが眩しいほどに。ベタなメロのギターソロって今まで実は無かった気がする。
サイケデリックな酩酊はポケットに。開け放たれた玄関扉から入った家屋の、地下室ではなくリビングに通されて、戸惑いながら次第にハシャぐだけでも充分に楽しい。でも瞬間的なノリだけにとどまらず、耳を澄まして抽斗を開けては見つけていく喜び。若いときには鍵がかかったままだった、そして見つけることが出来なかった。地下室も屋根裏部屋もまだ残ってるけど、いつの間にか外にいた!
ただ聴いて、カッコイー!ってだけで良い。いい意味で「意味なんて無い」音であり、純粋に「音だけ」で成り立っている。
好きな曲は今のところ、「HOWL」→ cyan,fry by wire 「OWL」→ mole soul です。
敢えて気になる点を挙げるけれど、全体を通して流れがなんだかゴツゴツッとしてて*2、音はツルッとクリア過ぎ*3に感じてしまう。ライブで聴いてるせいもあるだろうし、全くの個人的な好みの問題ですが・・・蛇足ですみません。


ともあれ、新譜が出たことがほんとうに嬉しい。早く新旧織り交ぜたライブを見たい!もっといろんな街を回れればいいのにね。これからの活動に心から期待しています。

*1:後でマルコシアスバンプの方と知ってビックリー

*2:追記:テンションを持続させてくれないとでもいうか…。1枚のなかで異なる風合いが交互に同居してるような起伏がある。2枚分の楽曲をもっとぎゅっと濃縮して1枚になっていると嬉しかったなあ

*3:追記:昼間にスピーカーを変えて大きめの音で聴いたら出方が変わって、見えた世界にハッとした。感覚的な話で恥ずかしいですが。