「アンダルシアの虹」

昨日NHKで「アンダルシアの虹」を放送していたのを、見る。佐々木昭一郎演出の作品が再びテレビで放送されるなんて!
主演はこれまでと同じく中尾幸世さんが演じるピアノ調律師、栄子。彼女がなんとスペインのアンダルシア地方へ旅立ち、現地の人々の日々の暮らしの中に溶け込んでいく。
スペインの光と色の輝きと吹き抜ける風と栄子の心情の変化のせいか、情緒の中に”念”が無くてカラッとしつつ郷愁が漂う。空の青とスカートの赤が眩しく美しい。
中尾さんの、気持ちをはぐらかすよにはにかんだ笑顔の反面、こちらをぐっと射抜く眼差しにドキドキして、大胆に取られた「余白」がその合間に入りこむ「音」を引き立て、「余韻」が心に染みていく。
「パンの焼きかたを知った。いいパンはいい音」ってモノローグが好きだ。市場で野菜や果物を売る声もよかったな。幸世さんの声って妙に心にひっかかる素敵な響きがあるのだなあ。
真夏の休日の午後に放送されるなんて、まさに白昼夢みたい。映像と音のスケッチ、素描のような趣きがある。私が佐々木作品を漸く見たのは数年前のユーロスペースでの上映だったので、テレビで見ることが出来て嬉しい。他の作品も放送されると良いな。今は、展開が素早くて衝撃的でわかりやすく説明してくれるよなドラマ作りになっていると思うけれど、こういう映像が不意に流れる余裕が欲しいなって思う。