「女は二度生まれる」「散歩する霊柩車」

朝からいい天気!午後から映画を見るのでそれまで散歩することにした。御茶ノ水の坂道は何度歩いても楽しい。喫茶店に入ると誰もいなかった。窓からは光がやわらかく差し込んで、微かに流れるクラシック、静かで穏やかでとてもここちよかった。会計時に「よい時間が過ごせました」とひとこと、「それはよかった」と微笑むご主人の表情は柔らかくて、窓からの光に似ていた。
神保町シアターへ。特集「神保町、御茶ノ水、九段下 "本の街"ぶらり映画日和」、今日は川島雄三「女は二度生まれる」と、佐藤肇「散歩する霊柩車」を。どちらも素晴らしく魅惑的なタイトル!

女は二度生まれる [DVD]

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やっぱり暗転してシネスコのスクリーンにバッと映し出される瞬間がたまらない。バシッと決まりまくって冴え渡るショットにホレボレ・・・。トントントンと話しが進んで無駄が無いのが美しい。ラストシーンに漂う寂寥感と安堵が混ざった空気がパツッと切れるところ、記憶よりも胸にきた。衝撃とも違うしなんだろか。川島監督の視線はフラットで、登場人物の誰も良人でも悪人でもなく肯定も否定もしていない。希望も絶望も乗り越えた地平ですべてを受け入れる、前向きな虚無とでもいうべき決心が、若尾文子の背中から感じられるのだ。靖国神社が登場する(今回の特集は神保町界隈でロケがテーマ)のだけど、この神社に込められたものと、昭和36年のメキメキと音を立てて変わりつつある時代背景を踏まえてこのストーリー。流石だなあ。あ、映画館が出てくるんだけど、渋谷の今は亡き文化会館のパンテオンだった!向かいに見える東急東横も現在建て替え中だけど。


「散歩する霊柩車」
西村晃主演のブラック・コメディで「豊満な肉体を持て余す人妻と、その浮気性に悩む夫が、大金目当てに強請を企てるが…」という話し。おもしろーい!西村晃の小柄な体型がうまく生きてて、ひょーいひょーいと身軽できもちよい。顔芸もタップリ。それと渥美清も淡々とヒンヤリしてる様がいい。そもそもタイトルが秀逸なんだけど(原作があるですね)、街中を霊柩車がすいーっと走り抜け、終いにはカーチェイスをするとか、シュールな映像でそれだけでオモシロい。ロケ地としては山の上ホテルなんだけど、名前がバーンと出る割に安い逢い引き用ホテルな扱いでいいんだろうか……


見終わって外へ出ると日が暮れて、合流しておでんを食べた。