「女妖」

見たい映画がいくつも重なっている今日この頃、取捨選択しスケジュールをどう組むか悩ましい。
今夜は神保町シネマで三隅研次監督作「女妖」(1960年)、面白くってもうビックリ!西条八十原作っつーのにもビックリ。
まずタイトルバックが格好良くって、これだけでもう大満足。ワクワクして本編へ。作家である船越父を巡る3人の女のストーリー、その3つの話のそれぞれはハチャメチャなんだけども、それらを繋げる構成にほぅっとなる。
視線の行き先や映るものに含みが合って、うまいなーと思っていると、屋台の金魚すくいの水槽のなかに山本富士子がドッボーン!と入っちゃったり、野添ひとみの象のぬいぐるみ抱えた不思議ちゃんっぷりとか、叶順子と華厳の滝をバックにキャハハハ!とくるくる回りつづけるとかお風呂に入ってきちゃうとか、コントとしか思えない素っ頓狂な演出に爆笑してしまう。いきなり出てきた高松英郎にもビックリだ。それにしても船越のボンクラぶりは名人芸である。
それでいてラストカットやファッションなど、色合わせがとてもモダン。3人の女にはテーマカラーがあって、山本富士子は紫(なんだろうけど、むしろ色が無い感じだ)、野添ひとみは黄色、叶順子のはティファニーブルーな青。フィルムがとても美しくて、質感にホレボレ。マットなんだけど人物が肉感的というか、、、背景はあくまでも背景で、人物がしっかり出ている感じ。でもって風景が!冒頭の浅草、変わってないようで変わってる。角のパン屋の看板の愛らしさ! そして高井戸駅に胸踊る。高架になってて、ホームの下に街が広がっているのが見えた。環八もないし田舎町といった風情。西郊なアパルトマンもボロボロだけど素敵。 銀座の百貨店の見える街並、日光のお土産物屋の観光地のイラスト入りハンカチ?とか、滝の轟音が結構長い間続くとか、風景も存在感タップリに人格を持っているようで、嬉しくなった。あ、東急アパートメントも映ってたなあ。
奇天烈と洗練が同居してて、ナントモ変な映画って部類に入るのかなーとは思うけれど、いやいや私には胸の奥掴まれまくった映画でした、大満足。

神保町シアターのロビーは毎回飾り付けが素晴らしいのですが、硝子ケースのなかの馬に泣いた…。ほんと、いい映画館ダナー。
終わると外は土砂降りで、折りたたみ傘で慌てて駅へ向かった。珈琲飲んでいきたかったケドやめてしまった、ざんねん。