今年の音甘映画館 【映画編】

新作に旧作に特別上映など今年もますます盛りだくさんでした。

【新作映画ベスト3】
●「ペコロスの母に会いに行く
映画が表現しうる魔法がかけられていて、ほんとうに見事でした。先日テレビ番組で見た、監督のこの言葉が痛切に胸に突き刺さります。『思い出したくもない惨めな記憶も長い間には、思い出すのが楽しくなる。時の力は偉大だと人は言う。時が偉大なのではない。死滅しかかった脳味噌の記憶細胞を蘇らせることの可能な脳が偉大なのだ。そしてその偉大さの実感が楽しいのであり、それはほとんど愛なのだ』
●「3人のアンヌ」
ホン・サンス、さいっこー!反復反復反復、ステップ踏んで、ループループループ。その繋ぎ目に滲み出る、人間の可笑しみ。オモシロくて背筋がビリビリして、大好きです。こんなに可愛いイザベル・ユペール、初めて見たよ!
●「風立ちぬ
幕が閉じた途端に涙がドッと溢れてきて(ほんとにそういう出方)、ボロボロ止まらないままヨロヨロと外へ出た。自然物にも人工物にもそれぞれの動きに意思が込められていて、まるで人格を持っているかのようだった。それらの「動き」から立ち上がってくる「目に見えないもの」はもの凄い強度を持って鑑賞中に私のなかに蓄積され、最後にドッと溢れ出したのだろう。画面に込められたハヤオのアニメーション作家としての執念。ここまでのものをつくりあげるひと。


あとはプラス7本(?)順不同。

  • 欲望のバージニア」ニック・ケイブ先生の暗黒ロマンチシズムにシビレタ。
  • 「女っ気なし/遭難者」奇妙にオモシロく愛らしいところがオソロシサでもある。
  • イノセント・ガーデン」配役・衣装・音響・画面、暗黒乙女な世界観の構築が素晴らしい。
  • ムーンライズ・キングダムウェス・アンダーソンが作り出した王国。映画というのは総合芸術だなあとしみじみ。
  • 横道世之介」わたしはわたしのなかにいる「世之介」に笑顔で手を振る。
  • 「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」ジャームッシュの敬意と愛情に満ちた演出に泣けた。
  • ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン」ローゼズの素晴らしさとファンの想いを殺さないつくりが素晴らしい。同じく音楽ドキュメンタリーの「アントニオ・カルロス・ジョビン」も唄自体の素晴らしさを殺さないシームレスな編集が素晴らしかった。ローゼズの映画同様に監督が対象となるミュージシャンを愛し理解しつつ映画監督としての手腕を発揮していて、今後のこの手の映像のお手本になるべきだと思う。

(番外)「グッバイ・ファーストラブ」初回は昨年の特別上映ですが、一般公開で再見した今年のほうがぐっときました。

ベスト・アクトレスミア・ワシコウスカ


「ムード・インディゴ〜うたかたの日々〜」はすっかり忘れた頃に長尺版を見たい。「楽団のうさぎ」などもう1回見たいのも多々。「ザ・マスター」「孤独の天使たち」など見逃したものも多いし、現在公開中のものでは「かぐや姫」も「ゼロ・グラビティ」もまだなのだなあ。限られた時間とお金の中で今見るものを選択して鑑賞することは重くそして楽しい。映画館という場所も状況もどんどん変わる中、日本で上映しようと尽力された方々、上映してくださる劇場の方々、本当にありがとうございました。


旧作では今年も神保町シアターにお世話になりました。大好きな映画館です。阿佐ヶ谷ももっと通いたいけど、スケジュールがいつもなかなかキビシイんだよ・・・
名画座の、来年も目利きなナイスセレクトの特集を期待しています。