Jacques Rivetteのこと

雪になるかもしれない、小雨交じりの冷たさだけど、東中野へ向かいタンメン食べてから夜道をちょっこり散歩、そしてバスに乗り雨に濡れる見慣れない景色を眺めながら帰路につく。ああこういう金曜夜の過ごし方って楽しいなあと思いながらスマホを辿っていたところ、ジャック・リヴェット死去の報を知りました。

リヴェットを教えてくれたのはHちゃんで、ビデオを貸してくれた「北の橋」が素晴らしくって、パリの街を回遊して辿り着いたラストシーンには昂揚というかなんとも言いがたい、浮遊するようなあの感覚は忘れられない。そして「セリーヌとジュリーは舟でゆく」にとろんと魔法じかけにされて、「彼女たちの舞台」!これも大好き。4人の在り方のバランスや服装が素敵だった。それで三百人劇場で「修道女」を見て衝撃を受けた。シネ・ヴィヴァンで「パリでかくれんぼ 」が公開されたときは心踊った。その気持ちがスクリーン上に溢れてるよな、大好きな作品だなあ。シネパトスで電車の走行音が聞こえる中の「Mの物語」も想い出深いな。それから2008年のレトロスペクティブ、ビュル・オジェのトークとともに観た「狂気の愛」はまさに事件だった。「小さな山のまわりで」はなかなか一般公開されず、日仏会館での上映会で鑑賞することが出来た。あっさりと軽やかだけど、ぐっと心にくるところがあって好きだ。これが遺作なんだな……。「北の橋」と「彼女たちの舞台」が特に好き。
私は語れるほど見ていないし理解もしていないけれど、リヴェットの芯の強さを携えた軽やかさで冒険を続ける様が好きだ。世の中には対となるものが常にあり、そのあいだには秘密があって、それらの謎は謎のままであり、そのなかで屹然としながら曖昧にゆらゆらとしていることが気持ちよいのだ。
三百人劇場もシネ・ヴィヴァンもシネパトスも今はもう無く、Hちゃんとはあの数年以後、音信不通だ。訃報を何処で知るのだろう。届かない言葉なのはわかっているけれど、Hちゃん、リヴェットを教えてくれてありがとう。そしてジャック・リヴェット監督、たくさんの素晴らしい映画を残してくださってありがとうございました。