歩き続ける

会社帰りはターミナル駅を迂回してしばし歩いた。40分程度だろうか。テナントビルの煌々とした灯りと車のテールランプの光を浴びながら、ただただ歩いた。時折頭を過るのはもう随分昔に見た風景で、次第にそれすらも無くなり、歩くという行為のリズムが気持ちよかった。
5年前の今日もただただ歩いた。よく晴れた日、これから散歩してレコ屋に本屋に珈琲屋に寄っていこうってワクワクが断ち切られた後。dipの自主企画の特別なライブが延期になって、とにかく家へ帰ろうとした。目に映るのは今まで見たことのない光景で、頭のなかが混乱しながら歩くしか無かった。西の空に浮かぶ夕陽のオレンジ色が目に焼き付いている。


あと少しで我が家という地点にあるお宅の木蓮は、いよいよ白い羽を開き始めた。

あの頃、一斉に咲き誇ったこの木蓮の姿に希望を持てたその気持ちを忘れないように。そして当時の記録に書いた言葉「耳をすまして聞き取るのだ。そして思考停止せず、平常心と想像力を持つこと。」を今一度心に留めることにする。
そう、私たちは歩き続けるのだ。