花代&沢渡朔 「点子」/ ギャラリー小柳

平日午後、思いがけなくぽっかり空いた時間に伺った写真展、素敵だった。花代さんの写真を見るといつも心の奥がざわつくのだけど、今回は写真家である視点に加えて母親であるまなざしが深く、双方の距離感が交錯し、二重に胸にせつなくなった。ふたりの暮らしの瞬間が永遠になって、おなじ空気を吸っている気持ちになった。沢渡さんが撮る点子ちゃんは花代さんの娘ではなく、ひとりの女性であったことも素晴らしい。
点子ちゃんは花代さんの作品として生まれ、育った。それは運命だった。花代さんは自らの分身として、娘として、被写体に点子ちゃんを選んだ。次第に点子ちゃんは自我を持ち、花代さんの作品であり娘であった姿から離れていく。そこで引き継ぐように沢渡さんが点子ちゃんを撮影したのもまた、運命だったのかもしれない。花代さんの娘という冠を外し、ひとりの女性としての姿が抽出されていた。遠い記憶のようなぼやけた視界のなかに浮かぶちいさなかわいらしい女の子が、スカートが短くて持て余すような長い脚をさらけ出し、堂々と写真家に対峙するまなざしと躰を魅せるようになる。点子ちゃんを今の姿へ導いたのは花代さんだからこそだけど、花代さんが被写体として点子ちゃんを撮り続けたのは「娘だから」だけではないだろう。
沢渡さんの影響を受けた花代さん、花代さんの影響を受けた点子ちゃん、点子ちゃんから影響を受ける沢渡さんと花代さん。母娘の関係性、写真家とモデルの関係性、写真家と写真家の関係性なんてことをふと思いながらも、「3人」それぞれの芯を感じた写真展だった。