色と形と光と、

雨が降り少し涼しく感じる朝だった。昨日買ったばかりのコロンビアの防水モックを履いて家を出るも、徐々に止むところだった。代々木八幡から歩き始める。もちとふかのプレーンベーグルを買って、ギャラリーへ。

佐々木美穂さんの久しぶりの個展。色と合わせ方がほんとうに素敵だなあ。大人っぽくて洗練されてて、でもやわらかくて。塗りのぽてっとした重ね方もとても好き。コラージュの絶妙な匙加減も。ああ憧れる。一枚一枚向き合うのが楽しくてぐるぐる何度も見た。ポストカードを買うときに佐々木さんが話しかけてくださり、一気に緊張しながら長年のファンの想いを伝えてしまった!ポストカードは佐々木さん自ら封に入れてくださった。テープ留めによって、作品になっていた!嬉しい。


渋谷区役所は工事中、岸体育館の脇を通り、原宿駅前の歩道橋を渡ると人でぎっしりのなか、さささっと路地に抜ける。随分店も増えては代わり、建て替えの区画も多い。文化祭開催中の高校を過ぎて坂道を進む。陽が出て暑くなってきた。小さな古いビルの中へ。

花代さんの個展。場内全体がひとつの展示。見つける楽しさ。光が眩しい。今夏の記憶といつか昔の記憶がゆらゆら浮かぶ。変わらないものと変わりゆくものが目の前で混在する。掌サイズの写真集を購入するときに花代さんがサインをしてくださった。90年代頭に雑誌でお見かけし好きになった頃のまま可愛らしくて、素敵なかただった。

外へ出て、ああ!ここ、この通りにあったのか!と漸く飲み込めた。さっき建物内から見下ろしてわかっているはずなのに、道路に足をつけた目線によって脳内の地図と組み合った。


「霞ケ丘団地」という名の交差点だけど、その団地はもう、無い。

また歩きだしたところで、途中の煉瓦造りのマンションにギャラリー360°が移転していることに気づいた。永瀬沙世さんの写真展。星空の青が美しかった。外苑前、青山、表参道、そして渋谷。街が変わるごとに御囃子が聞こえてきた。パタパタ表裏に返し続けるように変貌する街であっても、氏神様のお祭りは昔も今もずっと続いているのだ。