前川國男建築に逢いに行く。

GWの話を今更で恐縮ですが、旅記録を何回か綴ります。6年ぶり2度目と、甲子園出場校なテンションで岡山へ。晴れて陽射しが強い。さすが「晴れの国」!久しぶりの岡山は変わっていないようでいて、でもやっぱりマンションや駐車場が増えているようにも感じます。路面電車とバスと自家用車、そして人。地元民も観光客も、たくさんの往来があって賑やか。街としての基礎体力の強さを思います。


さて、今回の旅は岡山県立美術館から始めます。こちらのエントランスで行なわれた「前川國男展 - 岡山からの提言」を見ました。コンパクトな展示ながら、模型や図面、ドローイングや写真は勿論のこと、彼が語った言葉が素晴らしかった。

人間ははかないものだよ。だから、せめて建築に永遠性を求める。
自分をはかないと思わない人間は、建築をはかないものにしてしまうんだ。

この数年、建築にまつわる問題が上がるけれど、この言葉が象徴しているように思えてなりません。


さて続いて向かうは天神山文化プラザ、前川國男による建築です。

この黄色!


横顔もすてきだなあ。ピロティへ入ると

黄色い低い天井と床のタイルの模様が広がり、奥に壁画が!駆け寄ると

吹き抜けになっていて、天へ届くように伸びていく壁画に胸を掴まれてしまった。エントランスとしてなんて巧みな設計なんだろうか。

いったんピロティからの階段へ


踊場の、こういうところもいいなあ。
2階から中へ入ると声を上げてしまった。

天井の紺色は夜空となって、照明が星の輝きを放つのです。こういうの、前川建築らしい。

三角が素敵。

正面には壁画が見えます。耐震補強の柱が入ってしまったのは残念ですが、Vの字が逆にアクセントにも見えて良い感じ。

以前行った弘前市民会館や木村産業研究所、熊本県立美術館などと共通するのは、一見シンプルだけどハッと息を呑むよな粋な計らいが忍ばされているところ。そんなさりげなくロマンチックな魔法が公共施設にあるって素晴らしいことだ。館内では市民の方々が展示を行なうなど今も盛んに使用されているし、建築物としての維持管理も継続的且つ丁寧にされていることがパッと見でもわかる。前川國男の姿勢が伝わっているのだなあと思うし、建物が街をつくり、人々を導くのだなと思うのです。


続いては・・・

岡山県庁舎、こちらも前川國男建築です。


この回廊のつくり、スゴイ。


中庭の緑も瑞々しくて、県庁とは思えない豊かな空間だなあ。

窓から中を覗いてみました。こちらにも壁画。
建物・内部・外構のすべてが調和されていて、公的な場としてのキチッとしたところに訪れる人々を包み込むやわらかさが感じられる場でした。


建築物がつくりだす景観はその土地の歴史であり、人々の生活の土台となって、記憶と意識を”無意識”に生み出す。
尤も、残すことが正義ではないし、都市開発は悪ではありません。しかし今ボコボコと際限なく出来る建物は、どういう意識を持っているのだろうかと考えてしまう。秩序や美しさよりも優先されることがあるようだ。今の東京で区役所の新庁舎建替が分譲マンションや商業施設との合築で施工されるのは、”そういう意識”を持つ時代だからだろう。
時代は移り変わる。「その時」の選択は永遠性を持つだろうか。岡山の晴れ晴れとした空の下で大切に使われる建物に出会い、いろいろと考えてしまったのでした。